なぜ、今本邦企業が中南米へ進出すべきなのか

1. はじめに

 中南米(Latin America and Carib: LAC )地域は、北はメキシコから南はチリ、アルゼンチン、西はカリブ海のカリブ諸国さらにはブラジルを含む33カ国の広範囲を領しており、人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。またアマゾンをはじめとした自然資源や鉱物・食料資源を豊富に有しており、我が国での需要の多くを賄っています。

 しかし、海外ビジネスを指向する本邦企業の関心の多くは、比較的距離が近く、かつ同じく高い成長を遂げているASEANをはじめ、近隣のアジア諸国に向けられがちであり、地理的に最も遠い中南米地域への関心が大いに高まっているとは言い難いのが現状です。

このコラムは、そのような日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援となるべく立ち挙げられました。これまで中南米を市場として視野に入れていなかった中小企業などの皆様に進出への関心を持ってもらえるよう、有益な情報を平易に提供することを指向しております。


2. なぜ、今本邦企業が中南米へ進出すべきなのか

 中南米は高いポテンシャルを有する反面、われわれ日本人にとって遠く印象の薄い存在です。「なぜ、今本邦企業が中南米へ進出すべきなのか」、まずは近年公開されている分析資料の幾つかを紹介します。

 日本貿易振興機構(Japan External Trade Organization: JETRO)は、「中南米地域戦略を考える」(2016年10月14日)というパワーポイント資料で中南米市場を再評価し、そこへビジネス進出する理由を以下のように10項目列挙しています。

① 経済規模(GDP): ASEAN+インドを凌駕し、一人当たりで3.5倍の規模

② 海外日系人数: 世界の推定日系人在住数約325万人(2014年時点)のうち、最大の約6割(約200万人)が在住→ 日本文化、ブランドの普及と信頼性向上に貢献し、またビジネス人材の供給源 1)

③ 消費市場: ブラジルやメキシコなど中南米主要国の家計最終支出(2015年時点)は、ASEAN+インドを凌駕。

④ 資源エネルギー: 鉱物資源の可採埋蔵量で世界に占める割合が大きい(例、石油:ベネズエラ1位、シェールガス:アルゼンチン2位、リチウム:チリ1位、銅:チリ1位)、亜鉛 2) :ペルー3位、メキシコ4位)

⑤ 食糧供給: 穀物(大豆、小麦)、食肉、広大な耕作可能地、南半球での端境期供給、病害虫の影響が比較的小さい

⑥ 世界の主要生産拠点の一角: 自動車生産台数では、メキシコ7位、ブラジル9位

⑦ インフラ需要: 2014-2020予測でインフラ需要と同投資不足額が南アジアに次ぐ規模であり、中国より大きい

域内コミュニケーション: ブラジル(ポルトガル語)を除く主要国はすべてスペイン語で意思疎通可 3) 。

⑨ 和平の進展: 2015年の世界平和度指数(Global Peace Index : GPI)は中南米で最も改善している。途上国・新興国ではASEANに次いで良い。

⑩ 投資ビジネス環境: ASEAN+インドと同等の投資環境、ただし太平洋同盟諸国(メキシコ、ペルー、コロンビア、チリ)で高評価 4) 。

 一方で、本邦企業が中南米を敬遠する理由として、i) 遠い、ii) 特殊言語、iii) 欧米潜在市場、iv) 治安の4つを挙げています。


 中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラムの創刊号、いかがだったでしょうか。中南米地域のポテンシャルの高さはうかがえたのではないでしょうか。このポテンシャルの高さに加えて、TPPが相乗してビジネス機会を拡大させます。第2号では、国際協力機構(Japan International Cooperation Agency: JICA)が見据える中南米地域の支援ニーズを見ていきます。


1) 筆者の経験からも、日本と現地の双方の文化、習慣を理解する日系人は現地における頼もしい支援者になりうるといえる。ただし、日本文化を十分に解さない日系人も少なくないとのこと。

2) 筆者による加筆。

3) 中南米地域33カ国中18カ国は元スペイン植民地。

4) 中南米内の各国でのビジネス環境の評価はレンジが大きい。本コラムの第3号で詳しく取り上げる予定。

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。