JICAが捉える中南米地域の支援ニーズとは?

1. JICAの視点からの中南米の支援ニーズ

 前号では、JETROが公開している資料から、本邦企業が中南米にビジネス進出するべき理由を紹介しました。今号からは、近年公開された他の文献をレビューしていきます。

 国際協力機構(Japan International Cooperation Agency: JICA)は政府開発援助の視点を中心として、中南米における開発ニーズおよび支援課題を分析しています1) 。まず、ここ数十年でみるとアジア諸国に比して経済成長率が低く、生産性の向上を課題に挙げています。生産性を高めるために、教育、人材育成、インフラ投資等へのニーズが高いとみています。

 また、中南米では人口の8割以上が都市部に集中しており、上下水道、ゴミ処理、住居などの都市インフラ整備が急務としています。他方で人口が都市へ集中することのビジネス環境としての利点を指摘する文献もあります。2) 筆者も都市災害対策の専門家として、中南米各国の都市インフラの現況を見てきましたが、経済発展や人口集中に都市インフラ整備が追い付いていないケースが多いことを確認しています。インフラ整備は筆者の専門分野なので、いずれ当コラムで特集を組みたいと考えています。


 中南米におけるインフラ開発のニーズは、IDBによれば年間1,500億ドル~2,500億ドルとされ、資金ニーズのすべてを国際機関や2国間援助資金で賄うことはできず、民間投資などの活用が必須と分析しています。

 コロンビアでは、反政府左翼ゲリラのコロンビア革命軍 (スペイン語:Fuerzas Armadas Revolucionarias de Colombia : FARC)との和平が実現し、開発への諸制約がなくなる一方、地雷除去や投降兵士の社会復帰といった平和構築の協力ニーズが発生しています。



2. JICA調査からの中南米主要国の市場動向の概観

 公開されてから少し時間が経っているのですが、JICA調査報告書「北米・中南米地域 日本と中南米の経済連携強化に向けた技術協力支援に係る情報収集・確認調査、ファイナルレポート(要約)」(2013年6月)は、2012年6月に設立された「太平洋同盟」の加盟国および加盟予定国への本邦企業の進出機会について有用な情報を提供しています。太平洋同盟とは、加盟国間の経済統合とアジア太平洋地域との政治経済関係の強化を目標にメキシコ、コロンビア、ペルー、チリの4カ国が加盟し、オブザーバーのコスタリカとパナマが加盟を予定して締結されたものです。

 この報告書では国ごとの具体的な情報が収集整理されており、そのうちの筆者が注目した情報を以下に抜粋します。

メキシコ

 メキシコに進出している日系医療機器メーカーは、中南米の医療機器市場を今後の成長市場と位置付けているものの、欧米企業がすでに高い市場シェアを押さえており、競争環境は厳しい状況という認識が一般。

コロンビア

 南米ではブラジルに次ぐ人口規模と購買能力があり、消費市場としての成長の可能性に加えて、他の中南米諸国へのビジネス拠点としても注目されている。

ペルー

 生産省技術革新センター(Centro de Innovación Tecnologica: CITE)は、当該国中小企業振興として生産性向上と競争力強化に向けた施策を実施。企業の技術革新への取組のコンクールを実施し、選ばれた会社には助成金を与えて支援。

チリ

 住友商事は木材加工工場から排出されるおがくずを活用したウッドペレット事業を2006年から実施。

コスタリカ

 医療機器メーカーのテルモ社傘下にある日系企業が医療機器製造工場の建設に約8 億ドルの投資を決定。

太平洋同盟

 閣僚審議会、高級事務レベルグループ、作業部会の3 種類の機能で運営。作業部会は担当国を設置しており、それぞれ、人の移動:メキシコ、資本・サービス:コロンビア、貿易・統合:チリ、そして国際協力:ペルーとなっている。

 

 中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラムの第2号、読んで頂きありがとうございました。次号では、世界ビジネス環境ランキングにおける中南米評価の現状を分析していきます。



1) JICAラテンアメリカ・カリブ地域への支援の方向性,「ラテンアメリカ時報 2017年春号」pp.4-6を引用した上で分析.

2) デロイト トーマツ コンサルティング株式会社,「平成25年度 アジア産業基盤強化等事業(中南米市場獲得における基礎的調査)報告書」より.

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。