世界ビジネス環境ランキングでの中南米の立ち位置は?(2017年版)

 世界銀行(World Bank: WB)は、世界のビジネス環境を評価して国別ランキングにまとめています。評価項目は、①ビジネス開始のしやすさ、②建設許可証の取り扱い、③電力供給、④資産登録、⑤資金借り入れ、⑥小規模投資家の保護、⑦課税、⑧越境交易、⑨契約の効力、⑩倒産処理の10項目からなり、実際にはセクターや進出企業の状況によって、評価項目の優先度が異なるところでしょうが、このランキングは一応の指標になると考えられます。

 データは2011年10月と2016年6月のものが入手できたので、これを見ていきましょう。下の表は、右側にビジネス環境の世界順位、左側に中南米地域での順位を示しています。カッコ書きの数字は2011年の順位です。まず世界全体をみると、上位ランクに大きな変動がなくおおむね安定しています。2011年に1位だったシンガポールは、2016年には2位を維持しています。日本は20位から34位へ後退しています。日本の周辺国では、ロシア(40位)、中国(78位)、ベトナム(82位)、インドネシア(91位)といった国々がビジネス環境を改善させ、ランクを上昇させています。

 さて、肝心の中南米諸国なのですが、チリ、ペルー、コロンビアといった2011年に中南米諸国としては上位を占めていた国々がランクを下げ、メキシコはどうにか2011年レベル程度を維持しています。表に示すとおり、中南米諸国の順位は全体的にあまり芳しくないのですが、コスタリカ、ジャマイカ、エルサルバドル、ホンジュラスなど中米・カリブの国々がランクを上昇させています(下表の黄色着色部を参照)。ホンジュラス(世界105位)は、グアテマラ(同88位)と関税同盟を結ぶ交渉を進めており、両国に国境を接するエルサルバドル(同95位)とニカラグア(同127位)へも合流を働きかけており、いずれの国も関心を寄せています1) 。それぞれの市場規模が小さい中米諸国が関税同盟などの経済統合を実現すれば、市場の魅力が増し、またビジネス環境の更なる改善も期待できます。


 ブラジルとアルゼンチンは低位に安定しています。ブラジル(同123位)は、材料、部品、労働力の「調達コストの上昇」やインフラの未整備、治安問題などいわゆる「ブラジルコスト」が背景にあるのでしょう。また、ブラジルで企業が税務申告等の準備に要する時間は、OECD諸国(先進国)の約12倍の平均2,083時間と報告されています2)

 評価項目として、まず気になる①ビジネス開始のしやすさについては、ジャマイカが世界12位につけています。一方、評価項目⑤資金借り入れを見ると、中南米地域では、コロンビア(世界2位)、メキシコ(同5位)、プエルトリコ、コスタリカおよびホンジュラス(同7位)と上位につけています。

 中南米は人口やGDPなどポテンシャルの高い反面、ビジネス環境の整備は相対的には進んでいないのが現状と理解されます。この数年中南米地域でのビジネス機会に対する期待は高まっていますが、やさしい環境ではないかもしれません。しかし、見方を変えれば、世界順位とはあくまで相対的な評価であり、ランクが低位にあることや下がったりすることが、必ずしもビジネス環境の悪いことや悪化したことを示すとは言えないです。本邦企業が多く進出しているインド、ミャンマー、バングラデシュなどの世界順位が低位にあることを考えてれば、中南米地域のビジネス環境に悲観することはありません。反面、メキシコやコロンビア、ペルーなどLAC順位の高い国々は、中国、ベトナム、インドネシアなどより上位にあり、国別に捉える視点も重要です。さらにメキシコ、ペルー、チリが交渉参加しているTPPが進展すれば、「日本にとっての」ビジネス環境は良好なものとなっていくのではないでしょうか。

 

 今回の世界のビジネス環境ランキング、いかがだったでしょうか。これらは全体概要みたいなものですが、世界銀行では中南米地域に特化した報告書で国別の具体的な情報を公開しています。いずれまた引用していきたいと考えています。次回第4号では、近年公開された文献からTPPの現状や期待をレビューしていきます。


1) JETRO, グアテマラ・ホンジュラス-中米関税同盟の加速を,世界のビジネス潮流を読む エリアレポート,ジェトロセンサー 2017年5月号より.

2) 世界銀行,Doing Business 2017より.

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。