ジェトロ調査にみる日系企業の中南米への進出の現況(その1)

1. ジェトロによる「2017年度 中南米進出日系企業実態調査」とは?


 今号からは3回にわたり、JETROが今年1月に公表した「2017年度 中南米進出日系企業実態調査 調査結果」から、進出企業の現況と今後の展望をじっくりと見ていきます。

この調査の目的は、「中南米における日系企業活動の経営状況、現地のビジネス環境変化を把握し、日本企業の海外事戦略立案や当該国ビジネス環境改善を促す提言などに資する情報提供」とあり、1999年から毎年実施されています1)。中南米への進出を企図している本邦企業にとっては、先行する本邦企業の業績や実態を概観する上でとても貴重な情報となります。

調査対象は、メキシコ、チリ、ペルー、コロンビア、アルゼンチン、ブラジル、ベネズエラの7カ国に進出する日系企業とし、2017年10月18日から同年11月22日の約1カ月間を要してアンケート調査(恐らく調査票方式)を実施しています。対象となる企業827社の約50.4%にあたる417社からの回答を得ています。

 下の表は、調査対象企業の内訳です。全体の回答率は50.4%とかろうじて過半数を超えていますが、対象のうちの最主要国ともいえるメキシコとブラジルでは、回答率がそれぞれ44.3%、41.8%と過半数に達していません。いつもお世話になっているJETRO様には大変失礼で恐縮なのですが、ここは今少し時間と予算を投じて「訪問調査方式」を一部でも採用すべきかと考えます。この投資と引き換えに回答率は格段に向上し、より良い情報を本邦企業の皆様に提供できることになると考えます。回答の業種内訳は、非製造業の方が少し多く、このうち「販売会社」83社が最も多い小項目内訳です。製造業では、「輸送用機器・部品」で同じく83社からの回答を得られています。企業規模では、大企業が84%を占めています。


2. 進出企業の2017年の業況感は?

 

 この調査では、業況感をDI値2)として読み取っています。調査対象7カ国(以下、「JETRO調査結果」と同様に「中南米全体」と呼ぶ)のDI値は、2016年に比して約2倍の20.8に改善しています。特にチリでは2016年の10.8から、その約4倍の46.0にまで向上しています。これは、資源価格の回復が主因とみられています。ほかには、内需が回復基調にあるアルゼンチンが31.7、チリと同じく資源価格の回復が好影響したペルーが26.3と良好な業況にあります。しかし、メキシコではNAFTA再交渉など米国トランプ政権の方針の影響を背景として、日系企業の投資拡大に一服感があることも一因として、DI値が2016年の半分程度の16.3へと大きく低下しています。2017年の営業利益見込みが改善すると回答した理由で最も多かったのが「現地市場での売り上げ増加」であり、中南米全体での選択理由の約7割を占めています。ブラジルでも、「現地市場での売り上げ増加」が一番の改善理由とされていますが、それに続き「その他支出の削減」や「人件費の削減」など、いわゆる「ブラジルコスト」の削減に継続的に取り組んでいることが改善の理由に挙げられています。

 次号では、2018年に予想される業況感を見ていきます。今号も読んで頂きましてありがとうございます。



1) 「2017年度 中南米進出日系企業実態調査 調査結果」日本貿易振興機構海外調査部米州課、2018年1月.

2) DI: diffusion indexの略。ここでは、2017年の営業利益見込みが前年に比べて「改善」の比率から「悪化」の比率を引いた数値を用いている1)。

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。