ジェトロ調査にみる日系企業の中南米への進出の現況(その2)

米国アリゾナ州フェニックス 

中南米主要国のビジネス環境がアジアの途上国より優れる背景は、「中南米のアメリカナイズ」にあるのだろうか


1. 中南米へ進出した日系企業が見通す2018年の業況感は?


 前号より、JETROが今年1月に公表した「2017年度 中南米進出日系企業実態調査 調査結果」1)からみた進出企業の現況と今後の展望を見てきています。

 中南米へ進出した日系企業は、2018年の業況感をかなり好ましいと見通しています。DI値は、中南米全体では42.9と2017年の20.8の2倍強、2016年の11.7の4倍弱と、2年間で倍々のペースで向上しています。特にメキシコはNAFTA再交渉をめぐる不透明感があるにも関わらず、DI値が51.4と中南米全体で最高の業況感を持たれています。足元のビジネスは比較的堅調に推移するとみているようです。また、内需が回復の途上にあるブラジルでもDI値がメキシコに次ぐ47.4となっており、ペルーもまた同値です。ペルーに進出した企業で調査回答した19社は、いずれも業況が「悪化」すると予想していないことも好調ぶりをうかがわせるものです。ペルーで改善を見込む理由として最も多かったのは、卸売・小売(商社を含む)を中心として「輸出拡大による売上増加」であり、半数近くを占めています。


2. 進出企業の今後1,2年間の事業展開の方向性


 進出企業の今後1,2年間の事業展開は、「拡大」とする方針が中南米全体の59.5%となり、南西アジアの70.0%には及ばないまでも、ASEANなど他の新興地域以上に積極的な姿勢を示しています2)。国別では、「拡大」の回答率がペルーで73.7%、次いでコロンビアが73.3%と高いです。ペルーは2016年度調査時の65.2%から8.5%増加しているのですが、拡大方針の理由として「成長性、潜在力の高さ」を挙げる回答が増加していることが注目されます。

 では、具体的に何を拡大する方向かとの設問に対して、「販売機能」とする回答が75.0%と最も多いです。「生産機能」を拡大するとする回答は2割強程度であり、進出日系企業は中南米を生産よりも販売市場として捉える傾向が強いことが見て取れます。

 同業種企業で最も競合関係にある企業の進出元を問うたところ、中南米全体では「日系企業」との回答が36.7%で最も多いです。ペルーおよびコロンビアでは、「中国系企業」との回答がそれぞれ31.6%、20.0%と最も多いです。特にコロンビアでは、進出している中国系企業の数が最近2年間に20社から70社へと急増しており、日系進出企業は脅威を感じているようです。


 今号では、中南米へ進出した日系企業が近い将来へ明るい見通しを立てている割合が他地域に比べて多いことをご紹介しました。問題点も当然あるでしょうから、そのあたりも気になるところですね。次号では、進出企業が直面している経営上の問題を見ていきます。

 ところで、中南米主要国のビジネス環境がアジアの途上国より優れる背景は、「中南米のアメリカナイズ」にあるのでしょうか。私は2018年3月から4月にかけて米国アリゾナ州のフェニックス市を訪れ、ここで「アメリカナイズ」の意味するところを考えていました。次々号からは、このあたりについて論考してみたいと考えています。


1) 「2017年度 中南米進出日系企業実態調査 調査結果」日本貿易振興機構海外調査部米州課、2018年1月.

2) 進出企業の今後1,2年間の事業展開を「拡大」とする企業の割合:中南米60.3%、南西アジア:70.0%、東欧:57.9%、ASEAN:55.7%、アフリカ:52.9%、中東:49.8%、東アジア:46.7%.

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。