中南米進出に向けたフィージビリティスタディ(前篇1)

1. フィージビリティスタディとは?


 フィージビリティスタディ(Feasibility Study: F/S)とは、事業のビジネスとしての「実現可能性」を検証する調査を指します。ある事業機会への実施・投資を判断する前にビジネスとしての実現性をデータ分析や現地調査などにより確認します1) 。

 これまで本ビジネスコラムでは、中南米地域が日本にとっての“地球の裏側”に位置しているものの、既に巨大な中間層市場を形成し、ビジネス環境に優れ、国際協定による日本との関係強化の可能性がある一方で、インフラ整備のニーズが高いことなどをマクロ的にご紹介してきました。では、この市場に具体的にどのようにアプローチすべきでしょうか。「まずは現場を見る、市場を視察する」といった行動が頭に浮かびますが、漠然と現場を見るにも、比較的高額な旅費と移動時間を要しますので、効果的・効率的に成果を得られない場合も考えられます。そこで、優れた技術やアイデアを持ち中南米への事業進出に「少しでも」ご関心のある企業様には、その事業の実現性を早い段階で見極め、早期に実施の意思決定を行うべく、F/Sという「予備的な事前調査」に取り組むことをお勧めします。私どもはそのご支援を用意しております。

 本コラムでは、芳野剛史先生の著作「海外進出のためのフィージビリティスタディ」 (2015)を中心とした文献を一部引用しながら、その支援の要点をご紹介していきます。


2. 企業が海外進出するときの段階構成

 

 下の図は、企業が海外進出するときの段階構成を左から右へと整理したものです。段階は、計画、設立、運営の3つにより構成され、上述のF/Sは、「事業企画案」と「詳細事業計画」の間に位置して事業実施の一次判断に用いられます。新たに海外進出する場合、市場や規制などをゼロから調べなければならず、情報収集も日本国内で行うものよりは困難な場合が多いです。そこで、「詳細事業計画」に着手する前にF/Sを実施してその検証結果が良ければ、次ステップとして「詳細事業計画」に入ればよいというわけです。


3. 企業による海外進出では、何を計画しなければならないのか?

 

 上述のとおり、企業の海外進出における「計画段階」には,3つのステップがあります。まず、最初のステップが「事業企画案」を作成することです。これは、事業のアイデアをベースとした「初期仮説」とも言えます。その次のステップであるF/Sでは、ビジネスの「実現性が高いか否か」の確認に注力し、具体的な「手段」については詳細に検討しません。実現性を前提とした、最も効果的な実現方法「手段」を具体化する作業は、F/Sで実現性が高いことが確認できた後のステップである「詳細事業計画」にて行います。

 実は、ここで扱う「企業による海外進出」と「インフラ開発」などの大型案件とでは、F/Sに位置づけが異なります。前者が「売上」を重視するのに対して、後者は「コスト」を重視します。また、大型案件では比較的高額の費用をF/Sに投じることができるのに対して、「企業による海外進出」では投入する時間と費用をある程度に限定するのが現実的です。さらに「インフラ開発」などの大型案件では、F/Sの成果の読み手が金融機関や投資家など外部組織が中心であるのに対して、「企業による海外進出」では「社内での検討資料」という意味合いが強くなります。したがって、大型案件でのF/Sは事業実施の最終判断、「企業による海外進出」でのF/Sは一次判断に用いられるのが一般です。


 今号を読んで頂きまして有難うございます。次号以降では、「事業企画案」および「F/S」での要点を深掘りしていきます。



1) 「海外進出のためのフィージビリティスタディ」芳野剛史著(2015)を基に筆者が作成.

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。