中南米進出に向けたフィージビリティスタディ(前篇3)

1. 事業企画案で、役割分担や収益モデルを決める


 前号に引き続き、海外進出に向けた事業企画案に盛り込む項目を概説していきます。下の図は、海外進出に向けた事業企画案に盛り込む主な項目を再掲載したものです。

 ③オペレーションモデルとは、調達,生産,販売などの「機能概要」のことで、事業企画案では、現地法人にどの機能を置くかなど、その「機能分担」を概略設定します1)。このステップで詳細に検討する必要はなく、フィージビリティスタディ(F/S)のなかで「検討すべき重要な機能」について、その検証すべき要素を明らかにしておきます。

 ④収益モデルとは、「収益を得る仕組み」すなわちビジネスモデルのことです。どこで儲けるのか(収益方法)、また課金・支払いの方法を検討、整理します。

 収益方法には、i)製品・サービスそのものによる、またはii)その周辺領域(例えば、附属する消耗品)によるものの二つに大別されます。i)は一回限りの切り売りですので、「フロー型の課金」とも呼べるでしょう。ii)は製品・サービスそのものの利用が続く限り長期的な報酬が期待できる「ストック型の課金」となります。ストック型の課金形態は企業にとっては安定収入となり、売上予測が立てやすくなります。i)のみでなく、ii)によりパフォーマンス向上のための技術サービスを商材化する、いわゆる「製造業のサービス化」の議論が活発化しています2)。そのサービス類型は、製品へのサポートサービス(Services Supporting Products: SSP)と、顧客の行為をサポートするサービス(Services Supporting Clients’ actions: SSC)の2種類に大別されます。SSPによるサービスで得られる顧客ニーズなどの情報は限定的であり、そのため顧客との交流を伴うSSCへの移行を視野に入れて概略企画しておくと良いでしょう。

 支払い方法については、誰が、どのようにお金を支払うのか、より円滑となりうる方法を想定しておくことになります。売り手、買い手の双方がストレスやリスクを極力伴わない方法をこのステップで設定しておきましょう。


2. 事業企画案で、事業目標の「初期値」を決める

 

 ここで設定する事業目標は、3~5年後ぐらいまでの一定期間に達成すべき「状況」、さらには売上や利益などの数値目標を含む「初期値」です。事業企画案の段階で数値目標を示すことは容易ではなく、ほとんど「想定」や「希望」の域かもしれませんが、この段階でこれを設定するのは、意思決定の重要な材料となる「規模感」を表すためです。また、ここで設定された事業目標が元となり、F/Sで必要な修正や新しいアイデア、ブラッシュアップが加味され、より良い事業計画へと作り替えることとなります。

 この段階での数値目標には、比較的容易に入手できる公開データを基に算出します。最もシンプルな考え方としては、「進出国の産業市場規模」x「想定マーケットシェア」で算出する方法です。「進出国の産業市場規模」は公開データを用いるとして、「想定マーケットシェア」の設定には数字の根拠をある程度説明できるロジックを用意しなければならないでしょう。

 今号を読んで頂きまして有難うございます。次号以降では、いよいよフィージビリティスタディの要点について概説していきたいです。

 しかし、わたくしは来週末から2週間ほど南米のペルー国へ出張しますので、そこでの何か気づきがあればこれを取り上げたくも考えております。これについてご要望などございましたら、ご連絡頂けますと検討させて頂きます。


1) 「海外進出のためのフィージビリティスタディ」芳野剛史著(2015)を基に筆者が作成.

2) 「「製造業のサービス化」戦略」西岡健一・南知惠子著(2017) を基に筆者が作成.

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。