中南米進出に向けたフィージビリティスタディ(後篇2)

 海外へ視察旅行に出ていたこともあり、前号から一カ月空いてしまいました。今号ではF/Sでの作業内容(計画)を見ていきます。


1. F/Sでは、検証すべき「特定」の重要事項(イシュー)への明確な回答が重要!


 大事なことなので繰り返しますが、F/Sでは検証すべき「特定」の重要事項(イシュー)への明確な回答が重要です。F/Sでは、単に、または闇雲に検討項目全体を網羅すれば作業が終わるということではなく、重要な課題への回答を得る作業に注力すること重要です。そのためには、まず「答えるべきイシューをもらさないアプローチ」が必要であり、事業「特有」の課題、あるいは事業者「特有」の関心事を中心に考える必要があります1)。

 F/Sを行うにも時間と費用に限りがあるため、イシューの優先順位づけをして検証範囲を的確に決めることが重要となります。判断に迷うものについては、インターネットの公開情報や記事などに幅広く目を通すことで、抽出に役立つ情報を得られることも多いでしょう。

 そこで最も重要な基準となるのは、その事項が事業の実施判断にどれほどの影響を与えるかというものです。また、チーム内での納得感や合意形成を重視するなら、優先順位はあくまでも参考材料とし、話し合いで重要イシューを決めるという方法も有効でしょう。ただし、この方法には最終的な判断のリーダーシップが求められます。


2. イシューをどのように検証するか


イシューの検証には、「推論」と「掴み」が欠かせない

 特定したイシューをどのように検証していけばよいでしょうか。F/Sでは、必ずしも「事実」だけでは検証ができず、多様な事象やデータに基づいた「推論」が必要となってきます。ビジネスプラン(事業企画案)とは、推論の域を超えないことが多いため、正確性にこだわらず「掴み」の検証レベルを目指すことが肝要です。具体的には、①ルールや一般論に個別の事項を照合し、それが合致しているか否かをみる演繹(えんえき)法と②複数の個別事項から結論を導出する帰納法が推論方法として一般的です。また、演繹法からの推論と帰納法による「クロスチェック」(複数の方法での検証)により、さらに強固なロジックを形成することも効果的です。


情報収集の方法での緩急も重要


 検証作業を効率的かつ効果的に行うには、インターネットなど二次データの有効活用しつつ、現地での視察・インタビューなど積極的に一次データを取得することが重要です。ここでも、他情報源とのクロスチェックが重要となります。

 仮に信頼できる政府系機関のデータであっても、その調査の前提や定義によって異なる数字が出てくる場合もありますので、慎重な判断のためにも複数の情報源からデータを集めるべきです。対人関係において「会うこと」の重要性は強調するまでもありませんし、またインタビューも対面でできるに越したことはないかもしれませんが、「電話インタビュー」も視野に入れましょう。インタビューの対象が地域的に分散しているときや互いの予定を調整しづらいときなどに電話で済ませるということは、海外ではそれは失礼なことではないので、気にせずにメールでアポを入れて電話しましょう。

 またケースによっては、インターネットでのQ&Aサイト消費者に直接質問する方法も利用して良いでしょう。サンプル数が少ないので、得られるものは定性的なデータに過ぎないともいえますが、現地の生の声を手軽に入手することができます。実務的には、ここでサンプル数に拘ることは得策ではありません。

 現地での情報収集には、現地のコーディネーターに協力を依頼するのが良いでしょう。私も先のペルー出張ではインタビューや視察のセットアップにとても助かりました。現地事情に詳しい方の協力を得られたなら圧倒的に早く、的確な対応が期待できるというものです。



 今号も最後まで読んで頂きましてありがとうございます。次号でも引き続き作業内容(計画)を見ていきます。

 先日欧州へ視察旅行の際、オーストリア国の首都ウィーンにてペルー料理店を見かけました(本コラム巻頭の写真です)。ペルー料理の勢いを感じました。


1) 「海外進出のためのフィージビリティスタディ」芳野剛史著(2015)を基に筆者が作成.

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。