中南米進出に向けたフィージビリティスタディ(後篇3)

 前号ではF/Sでの作業内容(計画)について、①検証すべき「特定」の重要事項(イシュー)への明確な回答が重要であること、②イシューの検証には、「推論」と「掴み」が欠かせないこと、③情報収集の方法には緩急をつけること、を見てきました。イシューの検証方法を設定したら、それに取り組むための「全体の作業フロー」を組み立てます1)。

今号では、全体の作業フローを組み立てることについて見ていきましょう。


1. 作業を分解する


 イシューの検証に取り組むにあたって「全体の作業フロー」を組み立てます。作業の効率性を考慮すれば、作業の順番性も大切なので時系列の作業フローを着手前に作りましょう。

 まず、作業分解図(Work Breakdown Structure: WBS)を作成します。これは、「重層的統計図」ともいわれ図で表すことが一般的ですが、私は報告書の目次のように縦に並べてイメージしています。私が通常使っている手法では、一番上のレベルの作業の大項目を「章」と捉え、そこにぶら下がる次のレベルの「節」、更に下の「項」といった形でブレークダウンしていきます。丁度イメージに近い資料があったので、下図にご紹介します2)。これにより、フィージビリティスタディに必要なすべての作業を「一つひとつの作業量が見積もれるレベルにまで」分割し、網羅していきます。

作業分解図(Work Breakdown Structure: WBS)の一例


2. 作業の役割分担と所要時間を見積もる


 作業の分解ができたら、次に各作業の「役割分担」と「所要時間」を見積もります。ここで重要なのは「役割分担」だと私は考えています。作業の最初の段階で適任者をその作業に「アサイン」することが全体進捗の上でも大切です。

 作業には、ある作業の「完了」を受けて着手できるものと、同時「並行」してできるものがあります。そのような作業間の前後関係を整理するために、上記のブレークダウンされた各作業を「作業ネットワーク」に落とし込みます。これに各作業の所要時間を入れると、全体作業の完了のために最も所要時間の長い経路、すなわち「クリティカルパス」が見えてきます。(「クリティカルパス」の一例を下図に示します3)。)また、そのクリティカルパス上にあるタスクがその経路を「クリティカルパス」にしている場合もあります。そのように見つけられたクリティカルパスについて、特に工夫や改善あるいはマンパワーを多く投入するなどの対策をあらかじめ計画します。

 このように「クリティカル分析」を文章にすると面倒な作業に思われるかもしれませんが、効率的な作業のためには効果的な手法であり、作業着手前にこの分析を行うことが最短での作業完了につながります。


「クリティカルパス」の一例


 全体の作業を最終的には「ガントチャート」というバーチャート状のスケジュール表に落とし込みます。この際、各作業項目に「担当者」と「アウトプット」を付記し、責任の所在を明確にしておくことが望ましいでしょう。


 今号で見てきた「全体の作業フロー」の組み立てを以下におさらいします。


 次号からは、フィージビリティスタディで得られるべきアウトプットを一つ一つ見ていきましょう。今号を読んで頂きましてありがとうございました。



1) 「海外進出のためのフィージビリティスタディ」芳野剛史著(2015)を基に筆者が作成.

2) 「Work Breakdown Structure」Office of Management, Budget and Evaluation, U.S. Department of Energy (2003)

3) 「技術士第一次試験基礎科目 平成28年度 Ⅰ-1-4」(公社)日本技術士会 (2016)

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。