BRICSが見せる地力! ビジネス環境2019発表される

 前号まで3回続けて中南米進出に向けたフィージビリティスタディの後篇をお送りしておりました。Breaking Newsといっては遅いですが、今号では去る10月31日に世界銀行が発表した「ビジネス環境の現状2019:改革を支える研修(Doing Business 2019: Training for Reform)」1)について取り上げます。


1. 世界上位 ― 日本の相対的地位低下の継続と中国の躍進


 まず世界の上位を見ていきます。1位は今回もニュージーランド、1位から5位までの国は昨年と変わらず、今回4位の香港と5位の韓国が入れ替わったのみで安定しています。

前回35位のロシアは34位の日本を脅かす存在でしたが、今回遂に日本の上位に上がりました(今回のロシア:31位、日本:39位)。日本のスコアは前回に比べてわずかながら(+0.05ポイント)上がっているのですが、下位に位置していた多くの国々でのスコア向上はこれに上回っていますので、相対的にランクが下がっているのです。

 そして、遂に前回78位だった中国が今回46位と躍進を遂げました。日本がこのまま改善のスピードを上げられないならば、1、2年のうちに中国にも追い越されることでしょう。それにしても、中国は今回の躍進でメキシコやチリなどの中南米上位国をごぼう抜きしました。今回、中国は21項目もの改善策が認められ、「最も改善が見られた上位10カ国」の一つに数えられています2)。その改善策とは、電力供給事情や越境貿易の環境に認められています。この面からも米国が警戒するのはもっともなことですね。

世界のビジネス環境ランキング(世界上位)


2. 中南米上位 ― 上位各国わずかに下降もブラジルは大きく向上


中南米上位も昨年に比して大きな変動は見られませんが、世界のランクでは若干下がる傾向となりました。そんななかで、中南米でも下位の方に甘んじていたブラジルが前回の125位から今回109位へと順位を16も上げてきました。今回、ブラジルのスコアアップ数は中南米で最大でした。これは中国同様に電力供給や越境貿易に改善が認められたことによるもので、越境貿易では文書の簡易化、電子化が進んでいると評価されました。

 前々回の95位から前回73位へと躍進したエルサルバドルは、今回85位へと急落しています。エルサルバドルのスコアも前回比で+0.21です。そうです!、現在グローバルにビジネス環境の改善が急速に進んでいるので、その速度が遅いことは相対的な地位低下につながるのです。

 一方で今回、インドも前回100位から今回77位へと躍進しています。期せずしてBRICSの4カ国が同時にその自力を見せ、大きな上昇傾向を示したのが今回の大きな特徴でしょう。


世界のビジネス環境ランキング(中南米上位)


3. 中南米下位 ― 改善の兆しは淡く、その中にフィリピンも呑みこまれ…


 最後に中南米の下位を見ます。先述のとおり、ブラジルが下位国から脱していますが、それ以外には大きな変動がありません。このような下位が定位置にある国への進出については慎重を期すべきと考えます。フィリピンもスコアを+1.36伸ばしたにも関わらず、ランクを大きく下げ、今回は124位となっています。


世界のビジネス環境ランキング(中南米下位)


 最新の世界銀行ビジネス環境ランキングを駆け足で見てきました。今回のビジネス環境ランキングでは、現在グローバルにビジネス環境の改善が急速に進んでいる中、BRICSの4カ国が同時に大きな上昇傾向となり、その地力を見せています。これはGDPや人口ボーナスとは別の指標として注視すべきことでしょう。そして、IT化、貿易自由化など急激な市場環境の変化の渦中にいる我々は、真剣に進むべき方向や方策を考えなければなりません。

 年の瀬も近づいて参りました。次号からは、フィージビリティスタディのお話に戻り、その調査・検討で得られるべきアウトプットを一つ一つ見て本年のコラムを括りたいと考えております。今号を読んで頂きましてありがとうございました。



1) 世界銀行プレスリリース

https://www.worldbank.org/ja/news/press-release/2018/10/31/doing-business-report-new-record-set-as-314-reforms-introduced-to-improve-business-climate-around-the-world

2) “Doing Business 2019, Training for Reform”2019年10月.World Bank.

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。