2018年度ジェトロ調査にみる日系企業の中南米への進出の動向(その1)

1. ジェトロ「2018年度 中南米進出日系企業実態調査」の対象企業


 JETROは今年2月に「2018年度 中南米進出日系企業実態調査 調査結果」を公表しました。この調査は1999年から毎年実施されているもので、「中南米における日系企業活動の経営状況、現地のビジネス環境変化を把握し、日本企業の海外事戦略立案や当該国ビジネス環境改善を促す提言などに資する情報提供」することを目的としています1)

 調査対象は、前回と同じくメキシコ、チリ、コロンビア、ペルー、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラの7カ国に進出する日系企業とし、調査は2018年11月に40の質問項目を有する調査票を用いて実施されています。対象となる企業687社の約49.8%にあたる342社からの回答を得ています。

 下の表は、前回と今回の国別の調査対象企業数とその回答数です。メキシコの調査対象企業数が前回の400から今回250と大きく減少していますが、その背景は分かりません。チリとペルーでは調査対象企業数がそれぞれ20と11増加しており、いずれも回答数を増やしています。特にペルーでは調査対象企業数36のうち35社が回答しています。このように、日系企業にとっての主要な進出対象国であったメキシコとブラジルでの調査対象企業数と回答数がいずれも減少する中で、チリ、ペルーといった国の回答数が増えているのは長期的なトレンドとなるのか、今後も注視していきたいところです。



中南米進出日系企業実態調査の調査対象企業数とその回答数


2. 進出企業の2018年の業況感は?


 この調査では、業況感をDI値2)として読み取っています。調査対象7カ国(以下、「JETRO調査結果」と同様に「中南米全体」と呼ぶ)のDI値は、2017年には2016年に比して約2倍の20.8に改善しましたが、2018年には17.9とわずかに減少しました。

 下の表は調査対象7カ国における回答企業の業況感の変化を示しています。まず目につくのが、アルゼンチンでの業況感の極度な悪化です。2017年度調査では全体の2番目に業況感が良かったのですが、今回は最下位のマイナス8.4%にまで下落しました。その理由としては、同国での不安定な金融状況での「為替変動」と「金利の上昇」が挙げられています。前回調査では、進出企業が現状の金融不安をここまで予測できていなかった傾向があります。

 また、チリは前回資源価格の回復を背景として前々回の約4倍の46.0だったものが、今回は17.2となり、アルゼンチンに次ぐ下げ幅となっています。その悪化の理由としては、チリからの「輸出の低迷による売上減少」が最も多く(44.0%)挙げられています。

 他方、業況感を大幅に上げているのが、コロンビアとペルーです。特にコロンビアでは2016年12月の付加価値税の増税による2017年の内需縮小から脱却したとみる企業が多いことから、前回の約4倍となっています。ペルーでは現地市場での売り上げが増加傾向にあることが業況感の上昇を支えています。

調査対象7カ国における回答企業の業況感の変化


 次号では、2019年業況感の見込みから見ていきます。今号も読んで頂きましてありがとうございます。


1) 「2018年度 中南米進出日系企業実態調査 調査結果」日本貿易振興機構海外調査部米州課、2019年2月.

2) DI: diffusion indexの略。ここでは、2018年の営業利益見込みが前年に比べて「改善」の比率から「悪化」の比率を引いた数値を用いている1)。


中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。