日本の「インフラ輸出」戦略と中国の「一帯一路」構想が中南米へもたらすもの(その2)

1. 日本の「インフラ輸出」戦略、ナニを売るのか?


 前号から日本の「インフラ輸出」戦略と中国の「一帯一路」構想を見てきています。今号では、日本の「インフラ輸出」戦略がどのようなものであるのかについて概説し、それがどのように皆様のビジネスにつながるものか考えましょう。今号では、中国の「一帯一路」構想はおいて、まず日本の「インフラ輸出」戦略から見ていきます。

 インフラ設備の輸出や建設工事の海外受注が日本の成長戦略の一部として認識されるようになったのは、2009年に民主党政権下で新成長戦略の基本方針に盛り込まれてからです1)。国内産業のイノベーションと並んで「アジア経済戦略」という項目が立てられ、成長するアジア市場へのビジネス展開の一つとしてインフラ輸出が盛り込まれました。翌年の新成長戦略本文では「パッケージ型インフラ海外展開」という言葉が用いられ、民主党政権が終わるまでの期間、計18 回の関係大臣会合が開かれました。このような経緯を見るとインフラ輸出の議論は、当初から専ら「アジアを中心とした」外需の取り込みとしてスタートしたといえます。インフラ輸出を成長戦略の一つとする考え方は、2012 年に発足した第二次安倍内閣にも引き継がれ、その位置付けは拡大しました。2013 年の日本再興戦略の3 つの柱の一つに国際展開戦略が挙げられると、そこに含まれるインフラ輸出はそれまでよりも大きく扱われるようになりました。以降、日本再興戦略は毎年改訂(2017 年には未来投資戦略と改称)され、インフラ輸出に関する議論は、経協インフラ戦略会議において別に行われるようになり、その戦略も「インフラシステム輸出戦略」として独自に発表されるようになりました1)

 「インフラシステム輸出戦略」の最新版2)を見ると、輸出すべき日本のインフラが70ページの資料のあちこちに列挙されていますが、それは下表に挙げるとおり多岐にわたっています。これらのインフラを皆様のビジネスにつなげるとき、多くの場合細分化することが必要で、例えば「橋梁」建設事業を、「防蝕効果の高い塗装を必要とした橋梁」の建設などとした場合、塗装技術とインフラ輸出のつながりが見えてきます。また、日本国内で下表に挙げられたような事業と関わったことがあるならば、「インフラ輸出」に紐づけることは難しくないかもしれません。そのためには、ドコでドレを売ろうとしているのかを把握するアンテナを張る必要があり、またこちらの差別化できる製品を関係者に発信することも重要です。


「インフラシステム輸出戦略」に挙げられた重点的インフラ輸出対象

2. 日本の「インフラ輸出」戦略、ドコに売るのか?


 先述のとおり、成長するアジア市場へのビジネス展開の一つとしてインフラ輸出が盛り込まれた経緯があり、現在も日本の「インフラ輸出」戦略での優先地域の第一はASEAN諸国、第二が南西アジアです1)。我らが中南米は、中東、ロシア・独立国家共同体(Commonwealth of Independent States: CIS)、太平洋島嶼国らと並んで3番手に挙げられています。ASEAN諸国を第一とする理由としては、約3万社の日系企業が進出を果たしており、日本にとって密接な経済的利害関係のある「絶対に失えない、負けられない市場」であるとしています。今後の主流もそれが継続されると思われます。

 他方、国土交通省の資料では、本邦建設企業の受注実績の大部分がアジア又は北米の一部の国におけるものであり、その他のアジア諸国やアフリカ、中東、中南米といった地域への進出は限定的であることが課題に挙げられています3)。アジアや北米は確かに大きな市場ですが同時に日系企業間の競争が激しく、日本の海外展開を全体として進めて行くためには、既存市場の深耕とともに地理的な意味で多様な市場への進出を促進する必要があると指摘しています。


 今号はここまでとさせていただきます。最後まで読んでいただきましてありがとうございます。


1) 「インフラ輸出戦略と日本経済の浮揚効果」、JICA研究所、広田幸紀、2018年5月 https://www.jica.go.jp/jica-ri/ja/publication/other/20180514_01.html

2) 首相官邸ホームページ「インフラシステム輸出戦略(平成30 年度改訂版)」、平成30 年6月7日 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keikyou/dai37/siryou2.pdf

3) 「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画 2018」、平成30年3月


中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。