中南米地域でのインフラ需要の現状(その1)

1. 世界の経済成長をとりまくインフラ需要の規模とは?

 マッキンゼー・グローバル・インスティチュート(McKinsey Global Institute: MGI)によると1)、世界中のインフラ投資需要は2030年までで57~67兆ドルにのぼり、これは全世界の既存インフラストックの総額を上回る規模だといいます。また、この規模は1994年から2012年までの19年間の世界での投資額を60%上回っており、償却済みやリハビリテーションを要する資本財の代替需要を含めると、世界でのインフラの必要年間投資額は25兆ドルに達するそうです。これより、MGIは先進国、発展途上国ともに今後インフラ投資の需要は増加していくと予想しています。

 これらインフラ投資・整備が滞ると経済活動にブレーキをかける要因となります。急速な発展を遂げつつある新興国のみならず、発展途上国の多くは都市化・人口増への対応およびグローバル経済への参加のためには、インフラへの投資・整備を急ぐ必要があります。


2. 世界各国のインフラ整備状況のランキング

 世界経済フォーラムは、世界でのインフラ整備状況を国別にランキングしています。その最新情報を見ていきましょう2)。下の図は、世界経済フォーラムが各国のインフラ整備状況をスコアづけし、それを基にランキングしたもののうち、本コラムに関連する国々について抜粋してプロットしたものです。世界経済フォーラムによるスコアづけの対象は、インフラのうち交通運輸と電気通信のみに限られているので、限定的な評価と取れるかもしれません。しかし、これらは経済活動を行う上で必須のセクターであることは勿論であり、他のセクター(例えば上下水道)が大きく先行する例は少ないと考えられますので、評価に大きな誤差は含まれないと判断します。

 まず、世界上位5カ国のうち、4カ国がアジアに占められていることは誇らしいことですね。しかし、1位香港と2位シンガポールはともに都市国家なので、大国とは条件が異なるように考えられます。そのような中で、国土の7割以上を山地が占める日本が5位と健闘しています。実際、携帯電話の繋がらないエリアも昔に比べて随分減ったと思われます。

 さて、注目は中南米諸国なのですが、この地域でのトップはパナマ(世界36位)であり、これにチリ(同44位)、ウルグアイ(同47位)、メキシコ(同57位)、コスタリカ(同67位)と続きます。この辺りの国々が中南米諸国でのインフラ整備の「優等生」といえるでしょう。

 世界でこれらLAC上位国のランク周辺は、どのような国があるかといいますと、まずマレイシア(同24位)がそれらの上位に位置します。筆者が首都クアラルンプールの発展ぶりには驚いたのは、仕事で滞在した20年近く前のことでした。さて、中国は42位とチリを上回っています。インドネシア(同60位)、インド(同68位)は、メキシコやコスタリカと同じぐらいの位置にいます。インドネシアやインドにはまだまだインフラの整備が必要、といった印象がある(特にインド)ようですが、実は中南米の優等生らと伍しているのが現状です。

 LAC中位国では、ブラジルが注目されます。2013年の同調査では世界114位にランクされていました。何せ国土が広いこともあるのですが、これが世界銀行のビジネス環境ランキングにも大きく影響してブラジルのランクを下げていたのです。それが2016年には72位にまでランクアップしています3)。それだけ、インフラ整備の重要性を認識して投資に向けて努力している表れということでしょうか。

 LAC下位国には、ペルー(同89位)やボリビア(同102位)など急峻な山岳地帯を有する国があります。ペルーでは、幹線道路の整備が急速に進んでいますが、未舗装の区間が多いです4)。

 

 ここまでで、世界のインフラ需要の大きさ、更に中南米ではアジア諸国以上の需要があることが見えてきたかと思います。ここにビジネスの機会があることは確かなのですが、まずインフラ投資への原資をどこから持ってくるのか、という課題が挙がります。これについて、また進出にあたっての様々な障壁などは、次号に取り上げさせて頂きます。

 今号も読んで頂きありがとうございます。次号もどうかよろしくお願い致します。


1) 「マッキンゼーが予測する未来」、ダイヤモンド社、2017年1月

2) 「The Global Competitiveness Report 2016–2017」, Klaus Schwab, World Economic Forum, 2016

3) 世界銀行によるブラジルのビジネス環境ランキングは190カ国中123位(2016年).

4) ジェトロセンサー 2014年4月号

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。