中南米地域でのインフラ需要の現状(その3)

1. 本邦企業の中南米インフラマーケットへの参入は厳しいのか?


 前々号、前号の2回にわたり、中南米のインフラ整備はまだまだ途上にあり、インフラ投資・整備の遅滞が経済活動にブレーキをかけつつあるため、これを促進することは急務である一方、その促進にあたっての様々な障壁が存在することをお話ししました。今号では、この巨大な需要とその障壁を前にした取り組みのアプローチについて考えてみます。

 本邦企業が進出する上での障壁について、前号でお話ししたことを要約すると、

1) 公共調達では、技術よりも価格の競争になりがちであり、現地・海外企業との競争に負けてしまうケースが多い。

2) PPPにおける民間への過大な負担リスク

3) 長期間の事業のため、現地パートナーとの関係構築や社内合意形成に時間と労力を要する

4) 資金調達時の借入金利が高いこと、また高い現地調達比率を求められること

などが挙げられます。ここにもう一つ見落とせない事実を挙げると、中南米地域のPPP事業に進出しているスペイン建設企業の存在があります。スペインは公共財源の乏しかった1960年代後半に交通分野へコンセッションを導入しており、その担い手となったスペイン建設企業は建設工事だけでなく、資金調達、維持管理、運営など一連のサービス提供に関するノウハウを蓄積しています。また、旧宗主国として言語・文化の面で中南米に近く、自国の諸制度を技術移転することも比較的容易であったといわれます1)。

 前々号で注目したインフラ世界ランキングに戻りますと、ブラジルは2013年の114位から2016年には72位と躍進しています。ブラジルのインフラマーケットは依然として魅力があるといいます2)。しかし、そのインフラ整備の主流は、多くの場合に本邦企業を蚊帳の外にして、現地企業、スペインや中国などの海外企業によって確実に進められているのではないでしょうか。


2. この巨大な需要を前にした取り組みのアプローチ


 著者の上記論述に対して、ブラジルで着実にインフラ事業を展開されている方々が読めば異論のあることは承知しております。ここは、これから中南米地域に進出しようという中小企業の皆様を支援するという視点で持論を展開させて頂きます。

 中南米においてブラジルのマーケットが最も大きいのであれば、敢えてそこに進出しないことも良策と考えます。また、中南米におけるPPP事業の先駆者スペインと競争するのではなく、その下請けから始めるというアプローチも重要かもしれません。当方が先方の持たない優れた要素技術を保持し、それに高いニーズがあれば、先方に繋げることは難しくないのではないでしょうか。

 もう一つ、著者が現地で見た経験から主張したい点は、中南米の既存インフラには改善の余地が多いにある、ということです。調査や工事をもっと安く、早く、精度よく、効果的・効率的なものへ高質化する需要が大きいのです。「インフラの初期投資を十分に行うことが、やがてはライフサイクルコストの削減につながる、事業の当初からしっかり投資しましょう」という正論は、その経験のない限りなかなか理解されない場合が多いのが事実ではないでしょうか。今、やっていてうまくいかないもの、困っているものを改善させることに大きなニーズがあると考えます。

 今号も読んで頂きありがとうございます。これまでは既往文献のレビューを中心としたコラムでしたが、今号では言葉足らずながら、少しだけ持論を紹介させて頂きました。次号では、TPPで期待されるサービス貿易の自由化について取り上げます。


1) 「世界のPPP市場を牽引するスペイン建設企業」、三井物産戦略研究所 産業調査第二室、栗原誉志夫、2016年2月

2) 「ブラジルのインフラマーケットと日系企業の戦略」、デロイトトーマツ 谷田部雅史、2015年.

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。