日本が輸出すべきモノは、サービスである!

1. わが国のサービス貿易とTPPによる自由化


 日本におけるサービス産業は実体経済で大きく拡大し、「経済のサービス化」と呼ばれる状況をつくっています。下の図は2015年の日本の名目GDP530.5兆円における各産業の占める割合を表しています。図に示すとおり、サービス産業が名目GDPの約72%を占めています。輸出振興といえば、農産物や加工製品を対象と考えがちで、また近年は「インフラ輸出」が国の主導で推進されています。ここで強調しておきたいのは、下の図に示すとおり、日本の経済はサービス産業が支えているのであり、また戦後の高度経済成長は、加工貿易による輸出ではなく内需拡大で成し遂げたものなのです。もちろん、製造業や農林水産業に付随するサービス産業もありますので、その意味でサービス産業と製造業を対比させての議論というわけではありません。

 しかし、日本のサービス産業の貿易状況は芳しくありません。下の表は2016年の日本の貿易収支を整理したものです。全体では約400億ドルの黒字(表中(3)+(6))ですが、サービス貿易の収支は約100億ドルの赤字です(表中(6))。ちなみに2015年も赤字でした。これでも、2005年のサービス貿易収支4兆円の赤字に比べれば、改善傾向にはあるそうです1)。海外からの訪日観光客の増加に伴い、「旅行」収支が赤字から黒字へと改善の傾向にある反面、「専門業務サービス」や「通信・コンピュータ・情報サービス」などが収支を引き下げていることが赤字の原因となっています。

 「サービスは内需向け、貿易はモノ」というイメージを払しょくしてサービス貿易を推進しなければ、日本は沈んでしまいます。そこに追い風となるのが、このコラムの第4号(2017年9月21日)でも触れました「TPPでのサービス貿易の自由化」です。これが日本経済の大きな景気刺激策となる可能性があります。

 もう一つの効果としては、サービス貿易の自由化が経済活動の一極集中を避けて複数の地方都市圏を発展させ、これこそが地域活性化、地方創生の鍵になるという指摘があります2)。

2. TPPによるサービス貿易の自由化


 TPPにおけるサービス貿易の自由化では、「ネガティブ方式」と呼ばれるものが採用されており、自由化を「約束しない」(あるいは「留保する」分野のみをリストアップし、残りの規制は撤廃されることになります3)。例えば、ベトナムの留保内容を紹介している文献3)の一部を抜粋しますと、

① 輸出代理店サービスは、合弁企業あるいはベトナム企業の株式取得(49%が上限)と形態を除いては、輸出代理店サービスは認められない

② 道路での旅客・貨物輸送では、合弁企業の場合、ドライバーは全て現地人でなければならない。

③ 全部門において、支店の設立は経営コンサルタント関連サービス、建設および関連エンジニアリングサービスなど以外は認められない。

④ 測地および地図作成を行う場合、当局の認可を受けた上で実施し、当局にその成果物の一式を提出しなければならない。

などが規定されています。途上国としては、自国の経済発展に資するか否かが大きな関心事となっていることを背景とした規定です。このようにTPP参加国では、各々に協定文が異なるので、サービスの新規自由化の部分を進出したい国別に精査していく必要があります。

 今号も読んで頂きまして有難うございます。次号からは中南米進出にあたってどこを拠点にすべきかについて考えていきます。



1) 「通産白書2016」、経済産業省、2016年.

2) 第9章 サービス貿易とTPP、石戸光

3) TPPとサービス貿易 –ベトナムの留保内容を事例として-、ITI調査研究シリーズNo.38、石戸光

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。