世界のビジネス環境ランキング2018

1. 2017年10月31日、世界銀行が最新の世界のビジネス環境ランキングを公表


 今号では、中南米への進出とその後の水平展開を見据えた拠点づくりについて取り上げる予定で原稿も用意していたのですが、去る10月31日に世界銀行(WB)が世界190カ国のビジネス環境ランキング2018年版1)を公表しましたので、その最新情報を皆様と共有したく予定を変更しました。

 WBは主に中小ビジネスを後押しする目的で、各国・地域の資金調達環境や電力供給、税制など10項目を分析し、毎年ランキングにまとめています。下の表は、右側にビジネス環境の世界順位、左側に中南米地域での順位を示しています。まず世界全体をみると、去年と比べて上位ランクに大きな変動がなくおおむね安定しています。ニュージーランドが1位を維持し、シンガポール(2位)、韓国(4位)、香港(5位)などのアジア勢も健闘しています。日本は、手続きが煩雑で登記などに時間がかかる点などがマイナス材料となり、「起業のしやすさ」が106位と下位にあります2)。制度の透明性や手続きの簡便さが評価されて「破綻処理」は190カ国・地域中で1位となった一方、大規模な金融緩和にもかかわらず、資金調達は77位にとどまりました。安倍政権の経済成長戦略では、2020年までに「世銀のビジネス環境ランキングで先進国中3位」との目標を掲げていますが、規制改革の遅れで上位に食い込むどころか、なだらかな下落傾向、相対的な地位の低下が中長期的には危惧されます。

2. 中南米の動向:エルサルバドルの躍進


 さて、中南米の上位を見ていきますと、こちらもこの1年間では大きな変動はありません。中南米での最上位は、メキシコ(世界49位)、チリ(世界50位)、ペルー(世界58位)の順です。その一方で、国際市場でのライバルともいえるアジア勢のベトナム(世界68位)、インドネシア(世界72位)、インド(世界100位)などは前年から大きくランクを上げています。そのような中で、中南米で今回唯一ランクを大幅アップさせているのがエルサルバドル(世界73位、中南米8位)です。

 WBはもっとも環境改善の著しかった10カ国の一つにエルサルバドルを挙げています。その主因の一つには税制の電子化が挙げられています。法人税、所得税の支払いや還付金の手続きがインターネット上で可能となりました。ほかにも、建設許可証の取り扱い、電力供給、越境交易の面での改善を評価されています。建設許可証の取り扱いおよび電力供給の改善では、オンライン化の導入や管理システムの改善などのソフト面が評価されています。また、越境交易に関しては税関の職員を大幅に増員するなど、手続きを迅速化する物質的な改善が認められました。

 筆者はエルサルバドルでも仕事をしておりますが、こちらの人々は勤勉で技術的な向上意欲が旺盛といった印象があります。通勤ラッシュを避けるためとはいえ、職員の朝の出勤時間も早いです。国土面積は九州の半分程度と小さいですが、米国やメキシコとの距離の近さやホンジュラス、グアテマラ、ニカラグアとの関税同盟や中米での経済統合に進展があれば、さらにビジネス環境の評価も高まるものと予想されます。

 中南米下位も1年間では大きな変動はなく、「低迷」しているという印象になりますが、それでもミャンマーやバングラデシュより上位の国がほとんどです。中南米市場と直接的な関係はありませんが、日本が注目するこれらの国がなぜランニング下位に甘んじているのかは、この先取り上げていきたいと考えています。

 

 次号からは、中南米への進出とその後の水平展開を見据えた拠点づくりについて取り上げていきます。



1) “Doing Business 2018, Reforming to Create Jobs”, World Bank Group (2018).

2) 「速報 ビジネス環境 日本34位どまり 世銀調査、政府目標遠く」、日本経済新聞(2017年10月31日)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2292793031102017EE8000/

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。