中南米進出の拠点をどこに置くのか?(その1)

1. 中南米への進出とその後の水平展開


 中南米はASEANを凌ぐ市場規模を有し、かつブラジル以外の多くの国ではスペイン語が使われていることから、比較的に長期的な水平展開が視野に入りやすいことは、本コラムの第1号(2017年9月1日)でご紹介しました。例えば、ASEANのケースを考えてみましょう。仮にベトナムへのビジネス進出に成功し、現地の人材育成にも自信を持てたとしても、他のASEAN諸国に進出するには再び言語の壁が立ちはだかります。それは言葉だけではなく、文化的な背景の相違も疎外感を抱かせることに繋がるかもしれません。一方、中南米では、言語同様に言語・文化の面で旧宗主国スペインの影響が強く残り、文化的なギャップは「比較的」小さいと考えられます1)。

 中南米への進出とその後の水平展開を考えたとき、どこを拠点とすべきか考えていきましょう。


2. マイアミは中南米の「首都」?


 チリ国のビジネス誌「America Enonomia」は、中南米における「ビジネスに適した都市」のランニングを毎年発表しています2)。残念ながら今年のものは未公開ですが、2016年版では、国際線便数、乗客数、人的資源、宿泊施設、金融、企業向けサービスの充実度などの指標や企業への聞き取りに基づいて都市のビジネス環境をランク付けしています3)。その結果は、1位:マイアミ(米国)、2位:サンチャゴ(チリ)、3位:メキシコシティー、4位:ボゴダ(コロンビア)だったとのことです。米国での調査対象はマイアミのみだったそうなので、実際にはロサンゼルス、ヒューストン、アトランタといった都市もポテンシャルが高いかもしれません。

 日本人にとってのマイアミは米国屈指のビーチリゾートというイメージが強いかと思います。人口はマイアミ市のみでは約45万人(2016年)4)に過ぎないですが、マイアミ都市圏では500万人を超え、米国第6位の人口を有する大都市圏です5)。また、米国のシンクタンクが発表した「世界都市ランキング」では、米国中第7位、世界第29位にランクされています。

 なぜ、マイアミが中南米での都市ランキングで第1位、それも過去数年間それを維持し続けているかといいますと、

① 米国および米国に進出している日本を含む先進国企業が中南米への玄関口として利用しているケースが多いこと

② 交通の利便性が高いこと: マイアミ空港(Miami International Airport: MIA)での国際線乗客数はニューヨークのJFK空港に次いで全米第2位、中南米・カリブ地域の76都市との航路を持っている6)。米国内での中南米への距離の近さ。

③ 運輸の利便性が高いこと: 米国と中南米諸国間での国際貨物便取扱量のうち、輸出の81%、輸入の84%をMIAでのものが占めている6)。

④ 外国政府が中南米進出の拠点を設置: 中国、韓国、台湾などの東アジア諸国を含む海外政府や団体が中南米への企業進出を支援する拠点を設置(中国のチャイナ・ラテンアメリカ・トレードセンター、台湾貿易センターなど)6)。

⑤ 優秀なヒスパニック系人材7)の調達が可能: 訛りのないスペイン語を用いられる中南米各国を出自とする多様な人材を調達できる8)。

 これらの理由から、マイアミは中南米の「首都」と呼ばれているそうです。次号では、他の視点からの「中南米拠点論」を見ていきましょう。



1) 注記: もちろん、文化的に均一であるわけではなく、方言もありますし、近隣国との政治的な摩擦のある場合があるのは、世界情勢の例からもれるものでもありません。

2) https://www.americaeconomia.com/rankings

3) ニュースレター第七号, TWI Global Business Home, 2016年5月.

4) アメリカ合衆国国勢調査局 (https://www.census.gov/programs-surveys/popest.html)

5) Wikipedia (https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%9F)

6) ニュースレター第10号, TWI Global Business Home, 2016年7月.

7) 注記: スペイン人、スペイン語またはスペインの文化に関連のあることを示すWikipedia (https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF)

8) ニュースレター第15号, TWI Global Business Home, 2016年11月.

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。