中南米進出の拠点をどこに置くのか?(その4)

 前号に引き続き、筆者の持論となる進出拠点としてのペルー国首都リマ市についてお話させて頂きます。


1. ペルー国リマ市のアクセス性


 前号でペルー国のポテンシャルとして、成長率予測の高さを挙げました。これは良しとして、当該国は世界ビジネス環境ランキングの中南米3位、日本と同じくTPP11の加盟国、国土面積は日本の約3.4倍、人口増加率1.258 %/年 (2015-2016)と述べましたが、これらの条件を満たす、または上回る存在がメキシコ国です。メキシコ国は世界ビジネス環境ランキングの中南米1位で国土面積がペルーを大きく上回り(日本の約5倍)、人口増加率も1.302 %/年とペルー国より高いです。TPP11の加盟国でもあります。2018年の実質GDP成長率予測はペルーが上回りますが、全体的に見てペルーとメキシコでは、メキシコに軍配が上がるでしょうか。

 しかし、「日本からの中南米進出」という視点では、メキシコに拠点では少し腰が引けている印象を筆者は持ちます。各要地へのアクセス性の視点から、具体的な数字を挙げてみてみましょう。地図を見れば一目ですが、ペルーからは中南米、特に南米へ比較的短時間で移動できます。進出拠点の候補となる都市からブラジルの主要都市サンパウロへの飛行所要時間を表2に整理しました。このとおり、南米に踏み込めば、北中米からよりも格段に南米地域でのアクセス性が良くなります。ちなみに日本と中南米を結ぶ直行便は、今年2月に就航した全日空の成田―メキシコシティのみです。日本との航空便がある都市とリマ市との飛行所要時間を参考までに表3に整理しました。


 リマ市からのアクセスを表4に見てみましょう。リマの空港からは、国内19都市、海外の首都・主要都市19ヶ所と繋がっています。南米の大きな国はおおむねカバーしています。南米での水平展開を視野に入れるなら、アクセス性の視点からはペルー国リマ市への進出をお勧めします。しかし、例えば自動車産業関連など米国やメキシコそのものを市場とするのであれば、メキシコを拠点とするのも当然と考えます。


2. 中南米進出に向けた人材調達


 中南米での水平展開を考えたとき、拠点で人材を調達して飛び回ってもらうことになるでしょう。それを考えたとき、どこを拠点とするのが能力・コストなどのバランスに優れた人材を調達するのに好ましいでしょうか。11月14日号で紹介した文献は、中南米各国を出自とし、訛りのないスペイン語を用いられる多様な人材を調達できることからマイアミを推していました1)。しかし、進出する国ごとに担当者を揃えるというのは規模の大きくない企業にとっては容易でないかもしれません。拠点で人材を調達するとなると、「お国柄」が発揮されると筆者は考えます。いくらか偏見で定性的、また国によっては失礼な視点になるかもしれませんが、筆者はこれが成功の条件の一つになるように考えています。

 まず、ブラジルですが、母国語ポルトガル語はスペイン語にかなり近い、ある程度の意思疎通ができるといいます。ラテン語の単語が近いということで、例えば筆者が昔イタリアで知り合ったメキシコ人は、現地で結構イタリア人と会話できていたので、簡単な単語を教えてもらい助かったこともありました。しかし、ブラジル人のポルトガル語が中南米のスペイン語圏でなかなか通じないようです。私の知り合いの日本人は、ブラジル人と一緒にコスタリカへ行った時のこと、タクシーの運転手に行き先を伝えるのにかなり苦労したそうです。一事が万事と決めつけるわけではありませんが、ポルトガル語でのビジネス展開には強い不安を伴うでしょう。

いよいよ偏見になりそうですが、アルゼンチン人はプライドが高く、南米での嫌われ者と見られることが多く、ボリビア人はかわいそうですが田舎者と見られる傾向が強いようです(筆者の視点ではなく、あくまでも南米で聞き取った情報です)。中米のエルサルバドル、ニカラグア、グアテマラ、ホンジュラスといった国は勤勉ですが、互いに疎外感を持っているようで、社交性がない印象も持ちました。その点、ペルー人を一言でいえば「いい人」、雇う側から見ると勤勉でもあると聞きます。これは筆者の見聞とも合致します。コロンビア人も勤勉2)といいますが、筆者はよく知りません。


 さて、4回にわたって中南米進出の拠点をどこに置くのかを論じてきましたが、いかがだったでしょうか。拠点を論じるには、他にもいろいろな切り口や視点があります。また、いずれ取り上げたいテーマです。ご意見をお待ち致します。

 今号を含め、これまでのコラムでは世界銀行が公表する世界ビジネス環境ランキングを頻繁に取り上げてきました。次号では、これを今一度おさらい、深掘りしたうえで、そのランクの意味するところを考えてみます。中南米諸国は50位ぐらいから下のランクに分布しているのですが、このランキングで1位あるいは下位に位置する国はどのような点を評価されているのか、中南米の域を超えて見ていきます。



1) ニュースレター第15号, TWI Global Business Home, 2016年11月.

2) 「V-1-②.中南米市場への視点 ~南米の成長市場の実態と攻略法は―ブラジル・メキシコ市場に次ぐコロンビア・ペルー市場の可能性~」、みずほコーポレート銀行 産業調査部

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。