アジア最後のフロンティアとして注目されるミャンマーの世界ビジネス環境ランキングは171位

1. ミャンマーへの注目の高さとランキングの低さのギャップとは?


 ミャンマーに関する報道といえば、最近は少数派イスラム教徒のロヒンギャへの迫害に集中する傾向にありますが、その以前は日系企業の陸続とした進出が注目されていました。現在も日系企業のミャンマーへの進出は盛んで、あるサイトによると、日系企業が現地法人を増やしている国のナンバーワンになっています1)。しかし、WBの世界ビジネス環境ランキングにおけるミャンマーの評価は振るいません。このギャップがどこから来ているのか、ランキング評価の内訳を見ていきましょう。

 下の図は、世界ビジネス環境ランキングにおけるミャンマーの各項目での評価スコアを示しています。⑤資金借り入れ(世界177位)、⑥小規模投資家の保護(同183位)、⑨契約の効力(同188位)の3項目の低評価が目立ちます。特に⑨契約の効力は世界ワースト3位です。しかし、④資産登録および⑤資金借り入れ、は改善傾向にあると最新の報告書では評価されています2), 3), 4)。この他にも、①ビジネス開始のしやすさ5)、③電力供給6)、⑦課税7)、⑧越境交易8)が改善を評価されており、まさに発展の途上と言えるでしょうか。文献9)での、「特に変わり方のスピードの速さは、瞠目に値する。(中略)このような「激変」を、ミャンマー専門家を含め誰も想定できなかった。この「意外性」が、それだけでこの国に注目を引き寄せる大きな理由である。」との指摘の一端とも言えるでしょう。ただし、その一方で、改善すべき点として⑤資金借り入れ10)、⑥小規模投資家の保護11)、⑦課税12)、⑧越境交易13)、⑨契約の効力14)が指摘されています。



2. 本邦企業にとってのミャンマーへの進出機会の分析


 この世界ビジネス環境ランキングが「起業家や中小企業がビジネスをやりやすい「環境」か否かを評価している」ということは、2017年12月21日号で述べさせております。ミャンマーの目立つ弱点の一つに⑤資金借り入れを挙げていますが、これが各々の進出企業のビジネスへどれだけ影響するかによって見方も変わってくるはずですね。つまり、関係する現地企業、現地法人の活動への影響が小さければ、個別・各論での評価が上向くということです。

 このランキングに現れない重要な要素として、ミャンマーにおける人件費の安さは魅力のはずです。また、ミャンマー「初」の経済特別区とされるティラワ経済特別区(Special Economy Zone: SEZ)への日系企業の進出にあたっては、JETROなど本邦政府機関の後押しがあります15)。ティラワSEZは日本国政府の支援を受けて整備されており、その周辺のインフラ(発電所、送電線、浄水場等)もJICA円借款によって整備される予定です。この施設を利用する場合、日系企業への追い風をランキングにある程度割り増しすることはできるでしょう。筆者は2012年から2016年にかけて度々ミャンマー国ヤンゴン市に滞在し、このあたりの事情を見ておりますが、ミャンマーへの進出は全般的には中国が先行していることも留意点になるかと考えられます。


 前号のニュージーランドに引き続き、中南米から離れたテーマを取り上げました。これは、定着しつつあるWBの世界ビジネス環境ランキングの本質について、高位・低位のランク国を事例として分析し、中南米の国々にフィードバック・相対して分析するためです。次号ではミャンマーと同じく日系企業が進出しつつあるバングラデシュを取り上げ、次々号では中南米の国に取り組みたいと考えています。



1) 「日本企業の進出が加速している国トップ20」、東洋経済ON LINE, 2018年1月18日(http://toyokeizai.net/articles/-/172367?page=2).

2) “Doing Business 2018, Reforming to Create Jobs”, World Bank Group (2018).以下、3)~8), 10)~14)の出典でもある.

3) 資産登録に係る書類へのスタンプ義務の廃止によるコスト削減を評価(2018年)(マイナーなことだろうか?)。

4) 公的機関の与信局設立を認めた法制度の制定が評価された(2017年、2018年)。

5) 現地法人の登記に求められる最低資本金の廃止(2016年)、法人登記に要する費用の削減、照会状・犯罪履歴証の提出義務の廃止(2017年)が改善として評価されている。

6) 新規電力供給に係る申請承認手続きを削減(2016年)。

7) 法人税率の軽減(2014年)、減価償却費の増加(2016年)

8) 輸出入に係る提出書類の削減(2015年)

9) 「ミャンマーの黎明」、津守滋著(2014)

10) 法的権利の強さの指標は、10段階評価の中で評価2.0、中南米平均:5.3、OECD高所得国:6.0(2018年)。

11) 株主の権利範囲、所有権と支配の程度、企業の透明性指標の程度を単純平均した場合の10段階評価の中で評価2.0、中南米平均:5.3、OECD高所得国:6.4(2018年)。

12) 増税および手続きの複雑化(付加価値税の還付金手続きでの提出書類の追加、四半期ごとに求められる法人税など)(2016年)

13) 手続きの遅れ、ヤンゴン港への荷上げコスト増(2017年)、輸出入に係る手続きの所要時間の長さ(輸出142時間、輸入230時間)、ちなみに中南米の平均は、輸出62.5時間、輸入64.4時間(いずれも2018年)

14) 裁判所を通して契約を締結するのに要する時間は、ミャンマー:1,160日間、ちなみに中南米平均:767.2日間、OECD高所得国:577.8日間。

15) 出典:ジェトロ・ウェブサイト(https://www.jetro.go.jp/world/asia/mm/sez.html)

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。