高い経済成長率と人口ボーナスが注目される国のポテンシャルと世界ビジネス環境ランキングのギャップとは?

1. 人口などに見るバングラデシュのポテンシャル


 バングラデシュといえば、人口の多さが特徴の一つに挙げられます。国土面積約147,000 km2に約1億6,175万人もの人口を有しており1)、シンガポールなどの都市国家を除くと世界で最も人口密度の高い国とされます。

 下の表は、世界の都市圏の人口とそのランキングについて、1990年から2014年の集計および2030年の予測をまとめたものです。インドや中国の都市圏の人口増加が目立つ中、バングラデシュの首都ダッカ市は2030年には世界第6位の都市圏に躍進すると予測されています。現在人口ボーナスを享受しているメキシコやブラジルの都市圏は相対的に地位を下げると予測されていますが、国全体での人口ボーナスは2033年ぐらいまでは継続されるとの予測があります2)。表の一番右側の列に2010年から2015年までの人口の平均年増加率を示していますが、ダッカ市は北京などに次いで大きな増加率をもって人口が膨らんでいます。バングラデシュは後発開発途上国と位置付けられ、1日2ドル未満で暮らす貧困層は国民の75%を超える約1億1800万人と推定される一方3)、経済成長率(GDP)は7.24% (2017)と高い水準で発展の途上にあります1)。この国の豊富で低廉な労働力は魅力であり、人件費の高騰した中国からも繊維業をはじめとした製造業の進出が盛んです。

 筆者の周辺では、バングラデシュが将来には世界の経済大国トップテンに入ると考える方もおられます。現在は日本などの開発支援で、交通、電力、農業などあらゆるインフラが急速に整備されつつあります。

 余談ながら、東京は2030年も一位を維持すると予測されていますが、人口が上位の都市圏の中で、2030年に人口減少が予測されているのは、東京と大阪(現在7位)のみです。


2. 世界ビジネス環境ランキングにみるバングラデシュの課題

 

 このように高いポテンシャルを有するバングラデシュですが、世界ビジネス環境ランキングにおいては177位と優れません。下の図は、世界ビジネス環境ランキングでのバングラデシュの評価を表しています。特に際立っているのが、電力供給(世界185位)の事情の悪さです。夏の暑い時期にはエアコンの電力需要などが高まる中、たびたび計画停電を余儀なくされています。発電機を有した建屋でなければ、電力供給事情がビジネス活動の大きな障壁となるのが現状です。電力供給の開始手続きには平均428.9日を要するとされ、また電力コストも高く、これらの項目では世界ワーストです4)。電力インフラの整備が急速に進行中ですので、徐々に改善されていくものと予想されますが、人口の多さがプラスとマイナス、両刃となって表れているといえます。資産登録も手続きが煩雑(8つの手続き)、時間がかかる(平均244日)、コスト高などから世界185位と低位にあります。越境貿易においても同じく、輸出入の手続きの時間とコスト高から世界189位となっています。


 今号ではミャンマーと同じく日系企業が進出しつつあるバングラデシュを取り上げ、ポテンシャルの反面、インフラの未整備や行政サービスが非効率であるところを整理してきました。これまで3回にわたって中南米以外の上位国、ポテンシャルを注目されながらもWBビジネス環境ランキングでは低位に甘んじている国での状況を整理することにより、何がそのランキングに反映されているか、イメージをつかんで頂くよう意図してきました。さて、次号では中南米の国に取り組みたいと考えています。



1) 外務省HP(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/bangladesh/data.html).

2) 「世界 人口ボーナス期で見る有望市場は」、ジェトロアンサー、2015年3月号

3) アジア開発銀行 Poverty in Asia and the Pacific: An Update Archived 2015年3月18日, at the Wayback Machine.

4) “Doing Business 2018, Reforming to Create Jobs, South Asia (SA)”, World Bank Group (2018)

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。