中南米上位国のビジネス環境を、少し掘り下げて分析してみると?(その1)

1. もはや日本に比肩する中南米上位国のビジネス環境


 本コラムでは、これまでの3回にわたって、定着しつつあるWBの世界ビジネス環境ランキングの本質について、ランク高位のニュージーランド、低位のミャンマー、バングラデシュを事例として分析してきました。そこでは、行政手続きの簡素化の有無、コスト削減や電力供給事情などがランクを大きく左右してきたことが見て取れました。われわれが注目している中南米はどうでしょうか。

 下の図は、中南米上位国の評価を各項目で示したものです1)。4カ国ともにある程度のバランスが取れているなか、チリ以外は「資金借り入れ」に好評価を与えられ、メキシコ以外は「倒産処理」の評価が低くなっています。図に表していませんが、日本がこれら4カ国全てに勝る評価を得ているのは、10項目中3項目のみです。2016年12月、日本技術士会では、現土木学会会長の大石先生を招いて講演を頂いていますが、そのなかで「日本はこのままではメキシコ並みの経済力にまで低下する」といったお話があったことを思い出します。日本の相対的地位は低下し、中位国の集団に呑みこまれつつあることが、ビジネス環境の評価では顕在化しています。日本の倒産処理は、その処理速度の速さ、回収率の高さが評価されて世界1位となっていますが、斜陽の国としていささか皮肉がきつ過ぎるでしょうか。

2. 世界ランキングにみるメキシコのビジネス環境の現況


 メキシコは、上の図に見るように「資金借り入れ」の評価が特に高く、世界6位につけています。この点、詳しく取り上げる機会を作りたいと考えていますが簡単に触れると、資金を借りやすくするような法整備を年々進めてきたことが高評価の要因です。電力供給の評価が4カ国中では比較的低いのですが、近年は電気供給施設の更新や電気代の透明性の改善などが好評価されて、改善の傾向にあります 2)。同じく比較的に評価の低い資産登録に関しては、それに要する費用が増加されたことで評価をさらに下げています3)。

 チリは、メキシコとは反対に「資金借り入れ」の評価が低いです。その一方で「ビジネス開始のしやすさ」と「建設許可証の取り扱い」の評価は4カ国中最上位で日本を上回る高評価です。「ビジネス開始のしやすさ」については、開業届けのオンライン化はもちろんのこと4)、新会社へ仮許可証を即時発行や、税務署による開業前の施設検査の廃止などの改善を繰り返しています5)。

 今号では中南米上位国のビジネス環境がある程度のバランスを保ちつつ、日本と比べてもそん色ないことをご紹介してきました。メキシコは「資金借り入れ」についての法整備を進め、世界上位に評価されています。さて、次号ではペルー、コスタリカについて分析していきます。



1) “Doing Business 2018, Reforming to Create Jobs”, World Bank Group (2018).

2) メキシコの電力供給は、インフラ改善により2013年、2014年、2018年に評価を上げている。“Doing Business 2018, Reforming to Create Jobs, Latin America and Caribbean (LAC)”, World Bank Group (2018)

3) メキシコの資産登録は、土地登記の電子化、品質改善、効率化を2017年に評価されている。“Doing Business 2018, Reforming to Create Jobs, Latin America and Caribbean (LAC)”, World Bank Group (2018)

4) 開業届けのオンライン化(2011年)、法人登記のオンライン化(2014年) “Doing Business 2018, Reforming to Create Jobs, Latin America and Caribbean (LAC)”, World Bank Group (2018)

5) 新会社へ仮許可証を即時発行、税務署による開業前の施設検査の廃止(2012年)“Doing Business 2018, Reforming to Create Jobs, Latin America and Caribbean (LAC)”, World Bank Group (2018)

中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。