2018年度ジェトロ調査にみる日系企業の中南米への進出の動向(その2)

1. 中南米へ進出した日系企業319社が見通す2019年の業況感


 前号に引き続き、JETROが今年2月に公表した「2018年度 中南米進出日系企業実態調査 調査結果」1)からみた進出企業の現況と今後の展望を見ていきます。まず、進出企業による2019年の業況感の予想を見ましょう。下の図は、調査対象7カ国における回答企業の業況感の変化を実線、2019年の見込みを破線と中抜きの丸印で示しています。

 ブラジルとチリの進出日系企業では、業況感が大きく上向くと見込まれています。その理由として、ブラジルでは大統領選挙後の通貨安定を背景として「為替変動」の改善が挙げられています。またチリでは、「人件費の削減」を理由とする回答が、前回調査に比して大幅に増えているようです。

 金融不安のあるアルゼンチンは、2019年にはいくらか持ち直すと見込まれています。しかし、ベネズエラはマイナス数値である現況から更に急落してマイナス41.7にまで落ち込んでいます。メキシコ、コロンビア、ペルーは前年からほぼ横ばいといったところです。


調査対象7カ国における回答企業の業況感の変化と2019年の見込み


2. 進出日系企業の今後1,2年間の事業展開の方向性


 進出企業の今後1,2年間の事業展開は、「拡大」とする方針が中南米全体の51.7%となり、前回調査と同様に過半数を超えています。国別では、「拡大」の回答率がコロンビアで72.2%と最も高いです。それは、今後の現地市場および輸出での売上増加の見込みを理由としています。

 拡大する機能としては、「販売機能」とする回答が中南米全体で73.9%と前回同様に最も多いです。今回の回答の特徴としては、「高付加価値製品の生産」機能を拡大するという回答が25.5%と「販売機能」に次ぐ回答となりました。特にペルーとアルゼンチンではこの回答が33.3%と大きな割合を占めています。それは、両国における市場規模および成長性を投資環境面でのメリットと認めていることが背景にあるようです。


3. TPP11の利用は?


 CPTTP (Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership、通称TPP11)3)は、米国を除く11カ国により去年12月30日に発効しました4)。参加する11カ国のうち、まず国内手続きを終えたメキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、豪州の6カ国の域内で同協定が適用されます。残る参加国では、ベトナムが来年1月14日に加わるほか、ブルネイ、チリ、マレーシア、ペルーも国内での批准手続きを進めており、今年中にも11カ国がそろうのでは、と期待されています。11カ国がそろえば、域内人口約5億人、国内総生産(GDP)約10兆ドルの巨大経済圏が誕生するわけですが、中南米からの参加国であるメキシコ、ペルー、チリへ進出している日系企業はTPP11の活用を検討している様子が調査結果からうかがえます。

 メキシコでは、約半数の進出企業が同国への輸入について日墨EPAとTPP11の併用(二つのなかで、有利な項目をそれぞれ採用すること)を検討しています。ペルーでは、ペルーから日本や東南アジア向けの輸出での利用を検討している企業がみられます。チリでは、多くの締約国に向けた輸出での利用を検討しているとの回答が多かったです。


4. 初期投下資本の回収状況は?


 ペルーおよびコロンビアでは、初期投資資本を回収できた割合がそれぞれ60.7%、50.0%と高いです。チリやブラジルなどは回収に要した時間が7年以上という割合が高く、一方中小企業が多く進出しているメキシコでは、「3年以内」に回収した割合が30.8%と対象国の中では最も多いです。政治・経済が混乱しているベネズエラでは初期投資資本を回収できたとする回答は33.3%と最も低く、未回収の企業のすべてが回収の見込みが立っていないと回答しています。

 今号も読んでいただきましてありがとうございました。実態調査の結果について、どのように思われたでしょうか。回答データは、いわゆる「意見」や見方であって、必ずしも「事実」とは限りません。しかし、進出した日系企業の現地での取り組みの一部あるいは概観としてみることができると考えます。次号では別のテーマについて見ていきたいと思っております。



1) 「2018年度 中南米進出日系企業実態調査 調査結果」日本貿易振興機構海外調査部米州課、2019年2月.

2) DI: diffusion indexの略。ここでは、2018年の営業利益見込みが前年に比べて「改善」の比率から「悪化」の比率を引いた数値を用いている1)。

3) デジタル大辞泉 https://kotobank.jp/word/CPTPP-2095164

4) 「TPP11発効、適用まず6カ国 果物・野菜の関税撤廃」朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASLDZ0GDXLDYULFA00B.html


中小企業の中南米進出を支援するビジネスコラム,新大橋総合研究所

なぜ、今本邦企業が中南米地域に進出すべきなのか。そこは、33カ国の広範囲を領した人口約6億人、GDPは5.1兆ドル(2015年)とASEAN5の約2.5倍で、既に巨大な中間層市場を形成した魅力的な市場です。日本にとっての“地球の裏側”という物理的な距離の遠さを「利用」し、本邦中小企業がビジネスチャンスを生み出し進出するための支援を我々は行っています。