NAOKI YAMASHITA

記事一覧(63)

COVID-19のインパクトとそれへの対応(その3)

1. はじめに 皆様いかがお過ごしでしょうか。前号から3か月が経過しましたが、依然COVID-19によるパンデミックは世界的に拡大傾向です。その収束を願ってやみません。前号では、COVID-19への自助的で本質的な対応策の第一として、体の健康を維持することに焦点を当てたお話をしました。手洗いも大切でしょうが、順番から言うと第二は「うがい」ではないかと考えます。対策のお話の前に、各地の感染判明状況から見ていきましょう。2. 各地でのCOVID-19の新規感染判明状況(1) 東京 東京での新規感染判明状況については毎日の報道で皆さんもご承知と思います。下図は日別の新規感染判明者数の棒グラフとその14日間平均を破線で結んだものです。新規感染判明者数の棒グラフだけでも何となく、新規感染判明者数の増加傾向は分かるかと思いますが、その14日間平均などを重ねると、より分かりやすくなると思います。ここ一週間ほどの間では、いわゆる第二波のピークを過ぎているようにも見受けられます。ただし、先のことは分かりませんので、棒グラフと破線が重なるところまでの実績のみを見るのが良いと考えます。東京都の「新型コロナウィルス感染症対策サイト」1)も4月頃のものと比べるとかなり充実してきました。新規感染判明者数に加えて入院患者の重症者数と検査の陽性率を見ると、把握されているおおよその状況が理解できると考えます。

COVID-19のインパクトとそれへの対応(その2)

Photo by Karolina Grabowska from Pexels1. はじめに 皆様いかがお過ごしでしょうか。前号の後半ではCOVID-19に対して自助的な対応として体の免疫力を高めて健康を維持することと、生活習慣への留意に少し触れました。COVID-19によるパンデミックの収束を願ってやみませんが、いつまで続くのか分かりませんし、下火になってからも長引く可能性もあります。また私たちが生きている間には、また別の新しく恐ろしい感染症が発生することも考えられます。 今号では、COVID-19への自助的で本質的な対応策について整理してみます。COVID-19への医療体制の拡充、治療薬の開発など、世界的な公助による対応策が待たれる現状ですが、それとても万全ではなく、これを災害と捉えると各々の自助的な取り組みが重要になります。巷では、外出時のマスク着用と手洗い・うがいが推奨されているようですが、私は自助による対策の優先順位を付けるなら、第一は体の健康を維持することであることに異論はないかと思います。手洗いも大切でしょうが、順番から言うと第二は「うがい」ではないかと考えます。2. COVID-19への自助的で本質的な対応策: 健康の維持(1) 特に栄養に留意して腸内環境を整えましょう 睡眠、栄養、適度な運動などが私たちの心身の健康を支えているのですが、なかでも栄養については、様々な有用情報があり、目移りしてしまいがちではないでしょうか。結局のところは、人間が昔から食べているものは全て体に良いものが選ばれた結果であるので、それらを幅広くバランスよく摂取することが栄養の基本だろうと思います。 特に小腸には、免疫細胞の6~7割が集中しているので、免疫力は腸内環境に大きく左右されるといいます1)。腸内環境は体に有用な乳酸菌、ビフィズス菌などの善玉菌と害を及ぼす悪玉菌があり、そのバランスによって保たれています。善玉菌の餌となる野菜、果物、発酵食品などの食物繊維や乳酸菌を積極的に摂ることで、腸内環境を良好に保つことが望まれます。具体的には、大根、椎茸、ニンジン、玉ねぎ、りんご、ハチミツ、納豆、ヨーグルトそれに青魚などが腸内環境を整えるうえで良いそうです。私の家族の食卓でも以前からハチミツ、納豆、ヨーグルトを毎日おいしく頂いています。ニンジンと玉ねぎは、鼻やのどの粘膜を強くするビタミンAも多く含むので、後述する「のど」での感染症対策にも有効ですね。また、ニンニクの臭い成分である硫黄化合物アリシンは免疫力強化、疲労回復の効果があるそうです。またニンニクは米国の国立がん研究所が「デザイナーズフード計画」で整理した重要性の高い食品のピラミッドの頂点にその名前が記されています2)。ニンニクに上記の大根、ニンジン、乳酸菌を豊富に含む発酵食品といえば、カクテキなどのキムチ類を思い出さないでしょうか。キムチには白菜浅漬けの約160倍もの乳酸菌が含まれ、しかも胃酸に強いので腸まで到達しやすいといいます3)。韓国でCOVID-19の拡大が比較的小さいのも、このキムチの常食が一因に挙げられないでしょうか。(2) 中米原産のチアシードは万能食品です! そして私が特にお勧めしたいのは、メキシコやグアテマラなどの中米を原産地とする「チアシード」です。チアシードは元々ダイエット食品として注目されていますが、①ミネラルによる免疫力強化、をはじめとして、② 便秘解消③ アミノ酸による美肌④ αーリノレン酸による糖尿病の予防、改善⑤ 骨の強化⑥ 満腹感⑦ PMS改善など様々な効果があり、是非食習慣に取り入れたい食材です4)。食べ方としては、まず「水」に12時間浸けて膨張させ、消化を良くします5)。膨らんだチアシード(写真)は、慣れないうちは正直、グロテスクで食欲をそそりません。これをヨーグルトや野菜・果物ジュースなどに混ぜて食します。つぶつぶの種をよく噛んでから飲み下します。私の家族はヨーグルトと先述のハチミツ、チアシードを混ぜたものを毎日食べています。これにカットフルーツを加える日もあります。

COVID-19のインパクトとそれへの対応(その1)

1. はじめに 今年3月7日の前号ではEPAを既に締結している国との貿易でのTPP11の更なるメリットなどを概観してきました。今号ではTPP11でのメリットを得るための具体的な方法を取り挙げるよう準備していましたが、今般の新型コロナウィルス感染症(Coronavirus Disease 2019: COVID-19)のこれほどまでの急速な拡大とその影響を、私は想像もできていませんでした。 身体的、経済的に悪影響を受けた多くの方々には、心よりお見舞い申し上げます。 私もいくつかの海外事業が無期延期となっており、軌道修正を強いられています。メディアでは多くのCOVID-19関連の情報が溢れていますが、将来だけでなく現状さえも良く見えないのが実情ではないでしょうか。今号では、予定を変更して、現状への認識とまず個人が取るべき本質的な対応策を私なりにまとめてみました。感染症の専門家でもない私がなぜこのようなコラムをまとめることにしたのかと言いますと、あまりにも多くの情報が錯綜するなかで、現状がどうなっていて対応策として何ができるのかを整理して皆様と考えたいと思ったからです。2. COVID-19の感染状況(2020年4月28日現在) 2020年4月28日現在、COVID-19について世界での感染判明者数(Global confirmed)は3,035,177人、死亡者数は210,610人、米国での感染検査被実施者数(Total tested in US)は5,593,495人です1)。私がいくつかのビジネスを行っているペルーでの感染判明者数(Confirmed cases)は27,517人、死亡者数728人であり、中南米ではブラジルに次ぐ感染判明者数および死亡者数となっています2)。 日本での感染判明者数および死亡者数は毎日報道されていますので、ここでは割愛します。東京都では、4月26日に実施した検査の結果、39名の新規感染判明者が確認されています。あまりマスコミで報じられていないと思うのですが、東京都の「新型コロナウィルス感染症対策サイト」では都内の最新感染動向が毎日更新され、様々な関連情報が提供されています3)。これによると、4月26日に実施した検査数は314人です。これには医療機関が保険適用で行った検査は含まれていないとのことで、東京都健康安全研究センターによる実施分のみとみられます。 私が特に関心を持ったのは、以下二つの図に示される検査実施件数(累計)、検査実施人数および陽性判明者数(累計)です。東京都では検査実施人数10,702人が検査を平均2、3回受けているようで、それにより陽性が判明した人は3,947人と、検査実施人数の約4割で感染が判明しているのです。巷で騒がれているように方針としては、感染をかなり疑われる対象に限って検査を実施していることが看て取れます。一方、医療崩壊が連呼されていますが、入院者2,668人中、重症者は93人、また陽性判明者(累計)の約4分の1の1,173人が退院しています。 検査の規模、精度などへの課題から検査数を制限し、実態の分からない状況下で都内には感染していない者と軽症者、無症状者が混在しているだろうことは多くの指摘のとおり容易に推察されます。米国ニューヨーク市では、4人に1人が感染しているとの調査結果が公表されました4)。

本邦企業が中南米との貿易でTPP11をどのように活かすか(その2)

 前号では世界を取り巻く貿易協定を概観してきました。貿易協定にはいろいろな呼称がありますが、二国間の「FTA/EPA」と近年の大きなトレンド「メガFTA」の新旧二種類に大別できるといった話です。今号では、メガFTAの一つであるTPP11でどのようなメリットがあるのかを見ていきます。1. TPP11でどのようなメリットがあるのか TPPの協定内容は米国の主張の多くを参加国が受け入れ、その見返りに米国の巨大市場へのアクセスを向上させることが大きな目的といえましたが、ご存知のとおりトランプ政権の保護貿易によるTPP離脱で大きな波乱が生じました。米国を含むTPP12は宙に浮いた形ですが、日本政府が強力な調整力を発揮してTPP11の発効にまで至ったのは、トランプ政権の想定外のことだったかもしれないと言われています1)。この点については、「いいぞ、日本!」って感じしませんか。様々な利点を持つTPP11ですが、その大きなものとしては、①既存のFTA/EPAより更に関税が下がる、②参加国の間で「海外から海外(Out-Out」の自由貿易が実現する(本邦企業が東南アジアで製造した製品を中南米へ直接輸出するなど)、③サービス貿易の規制が多く緩和される(これにより、政府調達の巨大な市場の門戸が開かれるなど、多様な機会が得られます)、などです。2. TPP11による二国間FTA/EPAを上回る関税の撤廃と削減 中南米ではメキシコ、ペルー、チリがTPP11に参加していますが、日本は既にこれらの国々と二国間FTA/EPAを発効させ、多くの品目で関税が撤廃、削減されています。しかし、TPP11が発効されれば、更に多くの品目が関税撤廃・削減の対象となります。例えば、ペルーでは、二国間FTA/EPAでの特恵関税率2)の適用品目数が88%ですが、TPP11では97%までが対象となります。さらに二国間FTA/EPAには含まれない冷凍食品、農産加工品などのペルーから日本への輸出では発効の即時に、関税が撤廃されます3)。同輸出のケースでは、加工食品以外に果物などでも関税メリットが発生します4)。例えば、ブドウでは2018年の二国間FTA/EPAでの関税率は2.1~8.5%となっていましたが、それは発効後に即時撤廃されます。オレンジでは発効後6年目に関税が16~32%であるものが9%にまで削減されます。 もっとも、その発効のためにはペルー国政府内での手続きが必要なのですが、未だその作業を完了していません5)。ただし、余談ながら日本とペルーとの間の租税条約が2019年11月18日に署名され、これにより二重課税や脱税が回避され、両国間の投資・経済交流を一層促進することが期待されています6)。 今号も最後まで読んでいただきましてありがとうございました。2017年9月1日に掲載を始めた本コラムは、今号で50号となりました。これまで多くの方々に読んでいただき感謝しております。今後もどうぞよろしくお願い致します。

本邦企業が中南米との貿易でTPP11をどのように活かすか(その1)

1. はじめに 本ビジネスコラムでもたびたび取り上げてきたTPP11は、2018年3月8日に11カ国で署名、同年7月6日には日本国内での手続きを完了し、同年12月30日にはTPP11が発効されました。現在、日本を含む7か国が国内手続きを終え、残る4か国でも手続きを進めているところです。マスメディアのTPPへの注目は、交渉の行方や米国の離脱など、2017年から2018年あたりの紆余曲折を山場に、現在小休息の感があるように思われますが、我々のビジネスでは発効後にこれをどのように活かすのか、ということが重要な関心事となります。今号から3回にわたって、「本邦企業が中南米との貿易でTPP11をどのように活かすか」、というテーマで見てまいります。2. 貿易用語は難しい? 何事も「難しい」とイメージさせてしまうものの一つが、数々のアルファベット表記での略語ではないでしょうか。貿易協定でいうと、TPP, FTA, EPAなどに加えて時折、日EU・EPAやRCEP(アールセップ)などといった略語が出てきて、貿易を専門としない人たちに抵抗感を抱かせます。特にFTAとEPAって、どう違うのか、というのは複数の議論や解説がみられます。ある書籍1)では、「FTAは関税削減、EPAはもっと広い自由化」としています。また、別の文献2)では「日本のFTAは、「経済連携協定(EPA)」の呼称が用いられてきたが、「EPA」は貿易の自由化に加え,知的財産や競争等の幅広いルールも規定する協定を意味する(現在ではFTAもEPAもほぼ同義)。」とあります。何となく「FTA/EPA」ぐらいに括って捉えても良いかもしれません。3. 貿易協定の大別論 元々、世界の貿易ルールは世界貿易機関(World Trade Organization: WTO)の下、161の国と地域の全会一致が原則でしたが、先進国と途上国の対立により2001年から開始した交渉は停滞してしまいました3)。そこで二国間での自由貿易協定(Free Trade Agreement: FTA)や経済連携協定(Economic Partnership Agreement: EPA)が貿易交渉の主流となりました。いまや世界全体では、構想・検討段階、政府間予備協議などを含めると500件近い協定があり、そのうち2019年12月現在で320件が発効済または暫定的に適用されています4)。しかしながら、このまま世界中の国々の二国間で交渉を続けるのは非効率だということで、地域でまとまって交渉する動きが出てきました。それが「メガFTA」と呼ばれるものです。 つまり、貿易協定にはいろいろな呼称がありますが、二国間の「FTA/EPA」と近年の大きなトレンド「メガFTA」の新旧二種類に大別できると捉えればスッキリしないでしょうか。4. グローバルビジネスの大きなトレンド「メガFTA」 世界の「メガFTA」には現在4つあります。その一つが本コラムのテーマの①TPP、去年2月1日に発効された②日EU・EPA、残る二つは交渉が難航している米国とEU間の③環大西洋貿易投資連携協定(Transatlantic Trade and Investment Partnership: TTIP)、そして東アジアというくくりで④東アジア地域包括的経済連携(Regional Comprehensive Economic Partnership: RCEP, アールセップ)です3)。①と④とがさらに統合してFTAの最終形態ともいえるのが、アジア太平洋全域をまたがるアジア太平洋自由貿易圏(Free Trade Area of the Asia-Pacific: FTAAP, エフタープ)という壮大な構想です。 今号も最後まで読んでいただきましてありがとうございました。次号では、TPP11でのメリットをみていきます。

本邦企業のパナマ進出のための出張に行きました

パナマ運河を太平洋側から東方へ望む しばらく本ビジネスコラムをご無沙汰しておりました。弊社はある中小企業様のパナマ進出をお手伝いしており、少し前のことになるのですが、今年9月には現地調査でパナマ国へ行きました。今号では、その出張の際に見聞したこと、考えたことなどをご紹介します。1. アメリカ大陸で最大のコロン保税区 パナマ空港に到着した翌日、アメリカ大陸で最大にして、香港に次いで世界で最も大規模な免税地帯の一つであるコロン保税区1)に行ってみました。コロン保税区は、パナマ運河のカリブ海側閘門の近くに免税地帯として1948年に設立されたものです1)。訪れた日は生憎日曜日だったので、区域内の活動はほとんどありませんでした。しかし、それを差し引いても、驚くほどの規模や設備とまではいかない印象でした。保税区の外、コロン市街は中米一危険な都市と言われているそうです2)。確かに街の裏通りなど、車で通っても少し不気味な雰囲気がありましたが、基本的に車で通行したり表通りを昼間に歩く程度なら危険は小さいのでは、と思います。「中米一危険な都市」というものの、ホンジュラスのサン・ペドロ・スーラやグアテマラのグアテマラシティなども劣らず危険といわれ、「一番」というのはいささか大袈裟な気もします。いずれにしろ、海外からのコロン保税区のイメージを悪くしないためにも、コロンの下町の治安改善は大きな課題と考えます。

日本の「インフラ輸出」戦略と中国の「一帯一路」構想が中南米へもたらすもの(その3)

 今号では、ペルー出張のご紹介で今年5月以来中断していた、表題の日中によるインフラ開発支援について、その政策が中南米諸国へもたらすものや、われわれがどのように活用または影響を受けるのかを見ていきます。1. 「一帯一路」構想による中国の中南米展開 文献1)によりますと、「一帯一路」構想(Belt and Road Initiative)とは、「共に計画を」(Planning together)、「共に構築を」(Building together)、「共に分かち合いを」(Sharing together)の三本の柱に基づいて、政策、インフラ、貿易、財政、人の交流における5 つの「連結性」(connectivity)を創造することで、双方に有利な「ウイン・ウイン」の協力体制を樹立し、人類のための共有社会を構築することを目指すものとあります。2013 年9 月に就任して間もない習近平国家主席が中国から西方へ延びる経済圏構想として提唱し、これを逆方向の中南米地域でも展開する積極的な外交が行われています。 また、米国トランプ政権のラテンアメリカ・カリブ(LAC)諸国への関心低下の間隙をついて、中国は同諸国の港湾施設をはじめとしたインフラ事業への投資を進めています。それは近いうちに中国がこれまで東南アジアやアフリカで展開してきたインフラ事業の規模を上回るほどの勢いであるとして、米国議会では警戒を強めています。もっとも、この動きは近年に始まったことではなく、2005 年以来、中国はLAC に対して約1500 億ドルの投資・融資を政府間で行ってきた実績があり、それらプロジェクトが「一帯一路」構想の性格を既に持ち合わせいるともいえます。2. 「一帯一路」構想の下でのインフラ事業 「一帯一路」構想の下での具体的なインフラ事業は、中南米地域に限定しても相当な数になるのですが、文献1)を基に敢えて以下に主なものを列挙してみました。「一帯一路」構想の下でのインフラ事業

【2019年】冬のペルーへ出張に行きました(その1)

1. 寒く霧雨の6月のリマ市 6月3日から6月14日にかけて、ある商品のペルーでの販路開拓のためにリマ市などへ出張してきました。今号では進行中の企画を中断して、リマ市などで見たことや考えたことを少しばかりご紹介したいと思います。 去年の7月、8月にリマ市を訪問して思ったことは湿度が高く、毎日曇天であるということです。在ペルー国日本大使館の資料1)によると、「リマ市は太平洋岸の標高0~約200メートルに位置し,気温は夏期(11月~4月)の最高気温が30℃,冬期(5月~10月)の最低気温が10℃(平均は22℃前後)と年間を通じて比較的温暖です。湿度は年平均で86%、冬期には最高湿度99%と一年中を通じて著しく高く,実際の気温より寒暖がより強く感じられる。雨量は極めて少なく,僅か冬期にガルーアと呼ばれる霧雨が主として朝晩に降る程度である。(一部変更)」とあります。また、ジェトロさんの資料2)では、「冬に当たる6月から8月ごろまでは一日中太陽が出ない曇天が続くのが一般的で、時々冷たい霧雨が街中を覆う。気温は、10度以下になることはないが高湿度で肌寒く感じられるため、セーターなどの防寒具も必要になる」とあります。 今回もリマ市では降っていました、毎日のように朝の霧雨が。毎朝、下の写真のような天気でした。一方、リマ市から南方へ車で数時間も走れば、そこは乾燥した砂漠地帯、日差しが強いが日陰は涼しいといった気候の地域になります。そんなリマ首都圏には、ペルー国人口の3分の1程度にあたる約1,000万人が住んでおり、この特徴的な気候に関連したさまざまなニーズとビジネスチャンスがあると考えています。

日本の「インフラ輸出」戦略と中国の「一帯一路」構想が中南米へもたらすもの(その2)

1. 日本の「インフラ輸出」戦略、ナニを売るのか? 前号から日本の「インフラ輸出」戦略と中国の「一帯一路」構想を見てきています。今号では、日本の「インフラ輸出」戦略がどのようなものであるのかについて概説し、それがどのように皆様のビジネスにつながるものか考えましょう。今号では、中国の「一帯一路」構想はおいて、まず日本の「インフラ輸出」戦略から見ていきます。 インフラ設備の輸出や建設工事の海外受注が日本の成長戦略の一部として認識されるようになったのは、2009年に民主党政権下で新成長戦略の基本方針に盛り込まれてからです1)。国内産業のイノベーションと並んで「アジア経済戦略」という項目が立てられ、成長するアジア市場へのビジネス展開の一つとしてインフラ輸出が盛り込まれました。翌年の新成長戦略本文では「パッケージ型インフラ海外展開」という言葉が用いられ、民主党政権が終わるまでの期間、計18 回の関係大臣会合が開かれました。このような経緯を見るとインフラ輸出の議論は、当初から専ら「アジアを中心とした」外需の取り込みとしてスタートしたといえます。インフラ輸出を成長戦略の一つとする考え方は、2012 年に発足した第二次安倍内閣にも引き継がれ、その位置付けは拡大しました。2013 年の日本再興戦略の3 つの柱の一つに国際展開戦略が挙げられると、そこに含まれるインフラ輸出はそれまでよりも大きく扱われるようになりました。以降、日本再興戦略は毎年改訂(2017 年には未来投資戦略と改称)され、インフラ輸出に関する議論は、経協インフラ戦略会議において別に行われるようになり、その戦略も「インフラシステム輸出戦略」として独自に発表されるようになりました1)。 「インフラシステム輸出戦略」の最新版2)を見ると、輸出すべき日本のインフラが70ページの資料のあちこちに列挙されていますが、それは下表に挙げるとおり多岐にわたっています。これらのインフラを皆様のビジネスにつなげるとき、多くの場合細分化することが必要で、例えば「橋梁」建設事業を、「防蝕効果の高い塗装を必要とした橋梁」の建設などとした場合、塗装技術とインフラ輸出のつながりが見えてきます。また、日本国内で下表に挙げられたような事業と関わったことがあるならば、「インフラ輸出」に紐づけることは難しくないかもしれません。そのためには、ドコでドレを売ろうとしているのかを把握するアンテナを張る必要があり、またこちらの差別化できる製品を関係者に発信することも重要です。「インフラシステム輸出戦略」に挙げられた重点的インフラ輸出対象

日本の「インフラ輸出」戦略と中国の「一帯一路」構想が中南米へもたらすもの(その1)

1. はじめに 2017年10月7日の本ビジネスコラム第6号「中南米地域でのインフラ需要の現状(その1)」で少し触れたのですが、新興国を中心とした世界のインフラ投資需要は膨大であり、これらインフラ投資・整備が滞ると経済活動にブレーキをかける要因となります。そのため急速な発展を遂げつつある新興国のみだけでなく、発展途上国の多くは都市化・人口増への対応やグローバル経済への参加のためには、インフラへの投資・整備を急ぐ必要があります。 日本は成長戦略・国際展開戦略の一環として、「「強みのある技術・ノウハウ」を最大限に活かし、世界の膨大なインフラ需要を積極的に取り込むことにより、我が国の力強い経済成長につなげていくこと」を掲げています1)。これには少子高齢化などによる国内インフラ投資市場の縮小も背景にあります2)。 他方、中国では2013 年9 月に就任して間もない習近平国家主席が、中国から欧州につながる陸域の輸送回廊を経済圏とする「シルクロード経済ベルト」構想:「一帯」と、インドネシアを含む「21 世紀海上のシルクロード」構想:「一路」を提唱し、これまでに関係国の運輸インフラ開発に多額を投じてきました3)。この二つを合わせて「一帯一路」構想と呼ばれるようになったのはご存知のとおりです。「一帯一路」構想は、中国から西方へ延びる経済圏構想ですが、これを逆方向の中南米地域でも展開する積極的な外交が行われています。 今号から数号にわたり、日中両国のこれらの海外進出政策が中南米諸国へもたらすものや、われわれがどのように活用または影響を受けるのかを見ていきます。2. 「インフラ」のおさらい 本コラムのなかで、これからいろいろな「インフラ」が出てくると思いますので、インフラについて簡単におさらいさせてください。インフラは鉄道、港湾などの運輸インフラや水資源、発電、上下水道、防災を含む生活インフラ、通信インフラを含む「①経済インフラ」と、学校や病院など公共施設の「②社会インフラ」の二つに大別されることが多いです。また、これらすべての構造物をハードインフラとし、それらを支える制度・基準、技術・運用ノウハウ、人材育成等をソフトインフラとする見方もあります4)。スマートフォンやウーバー、SNSなども今やインフラと呼んでも良いほど生活を支えていますが、今回のテーマでは含まないと考えていただいて良いでしょう。3. なぜ、インフラ輸出を国が後押しするのか? 上記の「インフラ」事業に直接のかかわりを持たないと思われている方々は、なぜ、インフラ輸出を国が後押しするのか?という疑問を持たれることもあろうかと思います。それについて日本政府は、①本邦企業の進出先国で物流や電力等の経済インフラを開発することが進出拠点整備やサプライチェーン強化につながり、現地の販売市場の獲得にも結びつくため、インフラ受注そのものに加えて、複合的な効果を生み出すこと、②持続可能な開発の実現及びその前提としての環境、防災、健康等の地球規模の課題解決に貢献することが、日本の外交的地位の向上にも貢献することの2点を理由に挙げています1)。また、インフラシステムの海外展開については、一義的には民間企業が主体的に取り組むことが重要であり、海外市場の特性を踏まえたグローバル戦略の策定、コスト競争力やマーケティングへの企業努力と強い意志が重要としつつも、国家間の苛烈な競争環境や先方政府の影響力の強さなどから国を挙げた取り組みが必要としています。 このような外交や経済の国益を優先した国単位の取り組みは、政府開発援助(ODA)においても世界的には常識とも言え、以前の日本は世界の競争環境において、いささか「フェアー」過ぎた感もありました。 今号も読んでいただきましてありがとうございました。今号は導入部分で終わってしまいましたが、次号からは日本政府の具体的な取り組みについて見ていきます。ちなみに、巻頭のイメージは、安倍首相がこれまでに訪問した中南米諸国の国旗で、10か国訪問されています5)。政府の新しい取り組みは、切り口を変えれば、これまでの「インフラ」事業に関連する企業にとってだけでなく、海外展開を企図する製造業を含む様々なセクターの企業様にとって有益な情報になると考えています。